こぎつね座

夏の星座

見え方: 双眼鏡で見える

こぎつね座は、肉眼で形をたどれず、コートハンガーと呼ぶ星の並びが見どころの星座です。

形のたどりかた

夏の大三角の内側を探します。こと座のベガ、はくちょう座のデネブ、わし座のアルタイルが作る三角形の、アルタイル寄りの内側がこぎつね座です。4.4等のα星が最も明るく、線で結べる形は残っていません。南の縁で小さな矢の形に並ぶや座を先に見つけ、そのすぐ北側を受け持つ星座と覚えると位置が定まります。

目じるしになる星

この星座の目じるしは星ではなく、星の並びのほうです。4.4等のα星アンサーは市街地の空では見えず、周りの星も5等より暗くなります。代わりに使えるのがコートハンガー(Cr399)で、全体で3.6等、視直径は約60分角と満月二つぶんの幅があります。わし座のアルタイルとベガを結ぶ線の三分の一あたり、や座の矢先から北西へ4度ほど送ると視野に入ります。

見ごろの時期と南中高度

国立天文台の位置の目安では、9月中旬の20時ごろに南中します。α星の赤緯は約+25度で、北緯35度なら南中高度は約80度、ほとんど頭の真上を通ります。高いところを通るぶん、通り抜ける大気の層が薄く、淡い対象には有利な位置です。天頂近くは双眼鏡を構えにくいため、腰を下ろして背をあずける姿勢を先に作るほうが、手の揺れは減ります。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

肉眼では星座として成立しない一方、双眼鏡を持てば市街地からでもコートハンガーの並びは追えます。3.6等の集まりなので光害に強く、郊外の空なら肉眼でも小さな光のしみとして見当がつきます。緯度の側は北緯35度で南中高度が約80度、北緯43度でも約72度と高いままなので、この星座を分けるのは緯度ではなく道具の側です。

星座の中の見どころ

主役はコートハンガー(Cr399)です。6倍から8倍の双眼鏡なら横棒の6星とフックの4星が一つの視野に収まり、倍率を上げると形が崩れます。ヒッパルコス衛星の距離測定では重なって見えるだけの並びで、まとまった星団ではありません。アレイ星雲は7.4等、双眼鏡では小さな灰色のしみ止まりで、写真の色は出ません。

名前と物語

由来

神話ではなく、1687年にヨハネス・ヘヴェリウスが設けた新しい星座です。もとの名は「ガチョウをくわえた子ギツネ」で、星図には獲物のガチョウを口にくわえたキツネの姿が描かれていました。のちにガチョウの部分は省かれ、星座の名だけがキツネとして残ったとされ、星座そのものに古代からの伝承はありません。

正体と距離

アレイ星雲は、死にゆく星が外層を吹き飛ばしてできた惑星状星雲です。1764年にフランスの天文学者シャルル・メシエが発見した最初の惑星状星雲で、双眼鏡でわずかに楕円のしみとして見える光は、太陽ほどの質量の星が一生を終えるときに残す最後の姿にあたります。中心には、外層を失ったあとの熱い芯が白色矮星として残っています。

変わるもの

アレイ星雲の淡い光は、いまも少しずつ広がりながら暗くなっています。惑星状星雲は、中心の星が吹き飛ばしたガスがそのまま宇宙空間へ散らばっていく束の間の姿で、長い時間のうちにいずれ周囲の暗闇に溶けて見えなくなると考えられています。中心に残る星は、そのころには白色矮星というほのかな残り火になっています。