かんむり座

夏の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

かんむり座は、七つほどの星が小さな半円を描く、手のひらに収まる大きさの星座です。

形のたどりかた

うしかい座のアルクトゥールスから東へ約20度送ると、直径5度ほどの小さな半円が現れます。開いた側を北に向けた弧で、2.2等のアルフェッカが弧の中央に据わります。半円の東側はヘルクレス座のキーストーンへ続くため、二つを並べて覚えると迷いません。南の低い空にあるみなみのかんむり座とは別の星座で、名前だけが似ています。

目じるしになる星

弧の中央で光る2.2等のアルフェッカが目じるしです。この一星だけは市街地の空にも残り、アルクトゥールスとこと座のベガを結んだ線のやや北寄りに位置します。残る六星は3.7等から4.9等で、明るさが一段落ちます。まずアルフェッカを見つけ、そこから東西へ弧を探す順序にすると、半円のどちら側から欠けるかで空の暗さも量れます。

見ごろの時期と南中高度

国立天文台の位置の目安では、7月中旬の20時ごろに南中します。アルフェッカの赤緯は約+27度で、北緯35度なら南中高度は約82度と天頂近くに来ます。高い位置を通るぶん大気減光が小さく、4等台の星まで残りやすい時期です。春の終わりの深夜から秋口の宵まで見えており、南中の前後で半円が最も見分けやすくなります。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

2.2等のアルフェッカは市街地でも見えますが、半円をつくる残りの星は4等台なので、街の空では弧が閉じません。七星がそろって見えるかどうかが、その場所の空の暗さの目安になり、環境省の星空観察が扱う夜空の明るさの差が形の欠けとして出ます。緯度の側は差が小さく、夏じゅう高い位置を保ちます。

星座の中の見どころ

見どころは二つの変光星です。T星は数十年おきに急に明るくなる再帰新星で、ふだんは10等台、過去の記録では2等前後まで上がりました。起きる年は決まらず、当たり年に居合わせるかどうかの対象です。呼び名は新星ですが、新星は新しく生まれた星ではありません。R星は不規則に暗くなる型で、6等前後から双眼鏡でも追えない明るさまで落ちます。

名前と物語

由来

クレタの王女アリアドネの冠と伝わります。迷宮でミノタウロスを倒す英雄テセウスを助けたアリアドネは、のちにナクソス島に置き去りにされますが、そこへ現れた酒神ディオニュソスに見初められ、結婚の贈り物として宝石をちりばめた冠を受け取ったとされます。その輝きを惜しんだディオニュソスが、冠をそのまま星座として天に上げたという話が伝わっています。

正体と距離

見どころのT星は、実際には白色矮星と赤色巨星が互いを回る連星系です。赤色巨星から流れ込んだガスが白色矮星の表面にたまり、一定量を超えると核融合が暴走して、星全体が一時的に大きく明るくなります。地球からの距離は約3000光年で、ふだんは肉眼に届かない暗さの系が、この爆発のときだけ2等星並みの明るさに化けます。

変わるもの

過去の記録では、およそ80年おきに大きな増光が繰り返されてきました。赤色巨星からのガスが白色矮星の表面にたまり、一定量を超えると核融合が暴走するまでの期間が、毎回ほぼ同じだけかかるためと考えられています。ただし正確な周期ではなく、次の増光がいつ来るかは分かっておらず、当たり年をねらって待つしかない現象です。