ヘルクレス座

夏の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

ヘルクレス座は、全天5位の広い面積を持ちながら、1等星を一つも含まない星座です。

形のたどりかた

こと座のベガとかんむり座の半円の間を見ます。その中ほどに一辺が5度ほどのゆがんだ四辺形が浮かび、これがキーストーン(かなめ石)と呼ばれる胴体です。3等前後の四星なので、街の空では四つそろわず、形になりません。四辺形の四隅から外へ、両腕と両脚にあたる星の列を伸ばすと、面積1225平方度の全体が見えてきます。

目じるしになる星

最も明るいのは肩のコルネフォロス(β星)で2.8等、頭のラスアルゲティは3.1等から3.9等の間で変わる変光星です。ベガから西へ約25度、うしかい座のアルクトゥールスから東へ約30度という位置関係のほうが手がかりになります。表記は「ヘラクレス座」と書かれることがありますが、国立天文台が用いる星座名はヘルクレス座です。

見ごろの時期と南中高度

国立天文台の位置の目安では、8月上旬の20時ごろに南中します。キーストーンの赤緯は約+35度で、北緯35度なら南中高度は約89度、ほぼ天頂を通ります。天頂は通り抜ける大気の層が最も薄く、淡いヘルクレス座大星団には条件のよい高さです。見上げる角度が急なため、寝ころべる場所を用意しないと、姿勢のほうが先に続かなくなります。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

2.8等と3.1等の二星は市街地でも残りますが、キーストーンの四星は3等台なので、街の空では四辺形が閉じません。四辺形がそろって見えるかどうかが、その場所の空の暗さの目安になります。緯度の側は北へ寄るほど高く、北緯43度でも天頂近くを通ります。差を決めるのは緯度ではなく夜空の明るさのほうです。

星座の中の見どころ

ヘルクレス座大星団(M13)が最大の見どころです。キーストーンの西の辺を、η星からζ星へ三分の一ほど下った点にあり、5.8等、双眼鏡では輪郭のぼやけた丸いしみ、暗い空では肉眼でも星と違う何かとして分かります。6.4等のM92は北東に約9度離れており、小さく中心が締まって見える点で見分けられます。

名前と物語

由来

ギリシャ神話では、半神の英雄ヘラクレスと伝わります。ゼウスの子として生まれ、女神ヘラの企みで正気を失って家族を手にかけたのち、その償いとして十二の功業を課せられたとされます。星座の姿は片膝をついた男の形で描かれ、最初の功業で倒したしし座の獅子の毛皮をまとった姿だという話が伝わっています。

正体と距離

肩のコルネフォロスは約139光年、頭のラスアルゲティは約360光年で、この二星だけでも奥行きは2倍以上離れています。ラスアルゲティは巨大にふくらんだ赤色巨星で、伴星を持つ多重星でもあります。さらにキーストーンの中にあるヘルクレス座大星団は約22000光年先の球状星団で、数十万個の星が集まっており、星座の星々よりはるかに遠い場所にあります。

変わるもの

太陽系そのものが天の川銀河の中を進んでおり、その進む先である太陽向点は、この星座とこと座の境界あたり、ベガに近い方向にあります。周りの恒星の動きを平均して求められた向きで、周りの恒星に対して太陽が静かに移動し続けているためです。何万年も先には、いまのヘルクレス座の星々の並びも少しずつ違う形に見えるようになると考えられます。