こと座イプシロン星
二重星
見え方: 空が暗ければ肉眼で
肉眼で二つ、双眼鏡で楽に二つ、その先は届きません。広いほうの離角は約208秒角で、そのそれぞれがさらに2秒角台の対に分かれています。
何がどう見えるか
こと座のベガのすぐ北東で、4.6等と4.7等のほぼ等しい明るさの星がおよそ208秒角、3.5分角離れて並びます。3.5分角は満月の直径の八分の一ほどで、空が暗く視力が出ていれば肉眼で二つに見分けられます。街の光が残る空では少し太った一つの星に見え、分かれているかどうかの判定そのものが難しくなります。見分けられた晩は、その空と目がよく効いている証拠になります。
探しかた(目じるしからの道順)
こと座のベガを視野に入れ、そこから1.7度ほど北東へずらすだけで届きます。ベガを視野の下の縁に置くと、上の縁の近くに小さな二つが入ります。夏から秋の宵は天頂近くを通るので高度で悩むことはありませんが、天頂付近は双眼鏡を支える姿勢がとりにくく、手ぶれが増えます。ベガが明るすぎて目が眩むときは、一度視野から外して数秒おいてから戻すと、二つの間が見やすくなります。
双眼鏡で何が増えるか
どんな双眼鏡でも、二つははっきり離れます。7倍でも間に黒い空が見え、同じ明るさの白い星が並んだ形が分かります。ここから先、二つのそれぞれが2秒角台でさらに割れることは、双眼鏡では確かめられません。双眼鏡が届くのは一段目までで、二段目は口径と倍率の話になります。肉眼と双眼鏡の守備範囲がどこで終わるのかを、一つの視野の中で示してくれる対です。
写真との落差
写真では四つの点が二組に分かれて写り、俗称の由来がそのまま見て取れます。二段目を分けるには長い焦点距離と落ち着いた大気が要り、目と双眼鏡で数えられるのは二つまでです。色はどちらも白っぽく、画像に乗るわずかな青みは感じられません。四つを期待して視野をのぞくと静かな二つとの差に戸惑いますが、二つに割れて見えた時点で、この対の見どころは果たされています。
正体
英語圏で「ダブルダブル」と呼ばれてきた対で、正式には北側がこと座イプシロン1、南側がこと座イプシロン2という別々の名を持ちます。距離はおよそ160光年、二組は0.16光年ほど離れてゆるく回り合っていると考えられています。それぞれの組の中では、数百年から千年を超える周期で二つの星が回っています。四つの星が二段の入れ子になった系で、見え方の段差はその構造をそのまま映しています。