てんびん座アルファ星

二重星

見え方: 空が暗ければ肉眼で

暗い空では肉眼で二つ、町なかでは双眼鏡が要ります。離角231秒角と広いのに、伴星が5.2等と暗いことがこの境目を作っています。

何がどう見えるか

2.7等の主星から231秒角、3.9分角離れて5.2等の星が並びます。3.9分角はこと座イプシロン星の対より広い間隔ですが、伴星が暗いぶん、こちらのほうが肉眼では難しくなります。月のない暗い空なら二つに分かれ、市街地では主星だけが残ります。離角が広くても明るさの差が効くことが分かる対で、離角の数字だけでは見えるかどうかが決まらない例になっています。

探しかた(目じるしからの道順)

さそり座のアンタレスから西へ25度ほど、同じくらいの高さを辿ると四辺形をなす星の並びに届き、その南西の角にあたる星がこれです。初夏から夏の宵に南の空へ上がりますが、赤緯マイナス16度と低く、東京あたりでは南中しても高度40度に届きません。南が開けた場所を選び、南中の前後に見るほうが分かれやすくなります。低い空では、伴星のほうが先に見えなくなります。

双眼鏡で何が増えるか

どの双眼鏡でも、二つは楽に離れます。7倍なら視野の中央に二つとも収まり、主星の青白さと伴星のやや黄ばんだ色の差が感じられます。肉眼で試してから双眼鏡に切り替えると、自分の空がどのくらい暗いかの目安になります。低空にあるうちは大気のゆらぎで伴星が瞬き、色も定まらないため、大気減光の少ない高度まで待つほうが確かです。

写真との落差

写真では明るさの差が縮み、同じくらいの光の玉が二つに写ります。露光を伸ばすと暗い伴星のほうも飽和し、肉眼で効いていた2.5等の差が絵から消えます。この差こそ肉眼で分かれるかどうかを決めている当のものです。色も画像処理で強められ、目にはどちらも白っぽく、わずかに伴星が黄ばんで感じられる程度にとどまります。画像だけを見ていると、この対の難しさは伝わりません。

正体

およそ76光年先にある対で、二つは空を同じ向きに同じ速さで動く共通固有運動の組です。実際の間隔は5000天文単位を超えると見積もられ、一周には数十万年かかります。どちらもカストル運動星団に属するとされ、やぎ座アルファ星のような見かけだけの並びとは成り立ちが違います。名の「ズベン・エル・ゲヌビ」は南の爪の意で、この星がもとさそりの爪だった頃の名残です。