はくちょう座61番星
二重星
見え方: 双眼鏡で見える
恒星までの距離が最初に測られた星です。1838年にベッセルが年周視差をとらえ、10光年あまりという答えを出しました。5.2等と6.1等の対です。
何がどう見えるか
5.2等と6.1等の、どちらもオレンジ色をした小さな星の対です。肉眼では暗いほうが沈み、一つの淡い星にしか見えません。離角は30秒角ほどで、満月の視直径の六十分の一にあたります。二つは659年かけて回り合っているため、離角は年ごとに少しずつ変わります。町なかの空では5等の主星さえ肉眼から消えます。
探しかた(目じるしからの道順)
夏の大三角のうち、はくちょう座のデネブが出発点です。デネブから南東へおよそ8度下ると、5等前後の星がまばらに散る領域に入ります。7倍の双眼鏡の実視界がおよそ7度なので、デネブを視野の端に置いて一視野と少し送ると見当がつきます。周りに同じ明るさの星が多く、一度では当てにくい対象です。
双眼鏡で何が増えるか
10倍前後を支えて構えると、細長い一つの光が二粒に割れます。30秒角は10倍で見かけ5分角まで開く計算ですが、手の揺れがそのまま像の太さになるため、双眼鏡用の三脚や柵に肘を置く支えが分かれ目を決めます。7倍でも空が落ち着いていれば割れ、揺れが大きいと細長い一つの光にとどまります。離れた瞬間に二つとも同じオレンジ色だと分かります。
写真との落差
写真に撮ると、この対は周りの星と同じ白い点として写り、色の淡さも距離の近さも像には出ません。長時間露光では暗い星ばかりが増えて、目当ての二つが埋もれます。この星の値打ちは姿ではなく位置の変化のほうにあり、1年に5.3秒角という動きは数十年ぶんの写真を重ねて初めて見える量です。一枚の絵として写真が語れる対象ではありません。
正体
恒星までの距離が最初に測られた星です。ベッセルは1838年、半年ごとの見かけの位置のずれからおよそ10.4光年を導き、太陽以外の星の距離が初めて数字になりました。ガイア衛星による現在の値は11.4光年です。ピアッツィが1804年に大きな固有運動を報告して「飛行星」と呼んだことが、ベッセルがこの星を選んだ理由でした。