ヤマグワ
実のなる木
触れたときの扱い: 特に知られた刺激はない / 見ごろ: 初夏(6〜7月)
同じ株で葉の形がそろわない木です。切れ込みの深い葉と、切れ込みのない卵形の葉が一本の中で混じるので、数枚見比べれば見当が付きます。
ひと目の手がかり
空き地や河川敷、生垣の隙間に鳥が種子を運んで勝手に生える落葉の木です。植えられたものではないため、街路樹の調査には出てきません。高さ3〜10mまで伸び、放っておかれた場所ほど大きくなります。決め手は葉で、一本の株の中に切れ込みのある葉とない葉が混ざります。ほかの木ではあまり起きないので、これだけで絞り込めます。同じように鳥が種子を運ぶトウネズミモチと並んで生えていることもあります。
葉と樹皮
葉は互生し、長さ5〜15cmの卵形で、先が尾のように細く伸びます。葉の切れ込みは0〜5裂と一定せず、若く勢いのある枝ほど深く裂けます。縁には鋸歯が粗く並び、表面はざらつき、裏は脈の上に毛が残ります。同じ枝でも上下で形が変わるため、一枚だけ見て決めないほうが確かです。樹皮は灰褐色で、縦に浅い筋が入って薄くはがれます。枝を折ると切り口が白く濁ります。
季節の見どころ(花・実・紅葉・冬芽)
4月、葉が開くのと同時に目立たない花が出ます。雌花の糸のように長い花柱がそのまま実に残るのが、この木の花の見どころです。6月には実が赤から黒紫へ変わり、歩道や車の屋根に濃い染みを落とします。雌雄異株の性質が強く、実の付く株と付かない株が分かれるため、同じ道でも汚れる木と汚れない木があります。秋は黄葉して早く落ち、冬は細い枝だけが残ります。
触れたらどうなるか
枝や葉柄を折ると白い乳液が出ます。同じクワ科のイチジクで知られる光毒性の皮膚炎は、ヤマグワでは報告されていません。葉の表面はざらつきますが、これによる刺激も知られていません。困るのは熟した実の汁で、手や衣類に付くと紫の染みが残り、洗っても抜けにくくなります。木の下に停めた車や、実の落ちた舗装でも同じことが起きます。クワ科全体の扱いは白い乳液にまとめてあります。
まちがえやすい木
同じクワ科のコウゾとカジノキが近く、どれも葉の形が乱れます。カジノキは葉の両面がびろうどのようにざらつき、葉柄にも毛が密に付きます。コウゾは表面だけがざらつき、実は球形で赤く熟します。ヤマグワの実は小さな粒が筒状に集まり、花柱の糸が残るので、丸い実の二種とは形で分かれます。葉で迷ったときは葉の切れ込みの出方と、実の付く時期を合わせて見ます。