おおいぬ座

冬の星座

見え方: 肉眼で見える

おおいぬ座は、全天でいちばん明るいマイナス1.5等の恒星シリウスを首もとに持ちます。

形のたどりかた

オリオン座の三ツ星を左下へ、南東の向きに約20度延ばすと、シリウスに行き当たります。ここが犬の首もとで、そこから南へ目を下ろすと2等星が三角形に並び、それが胴と後脚にあたります。三角形の東からさらに2等台の星が続いて尾になり、横向きに立つ犬の形がつながります。胴から下は地平線に近く、南が開けていない場所では形が途中で切れます。

目じるしになる星

シリウス1つで、この星座は見つかります。マイナス1.5等は2番目に明るいりゅうこつ座のカノープスより0.7等ぶん明るく、その理由は8.6光年という近さにあります。白や青や赤へちらちらと色が変わって見えても、星の側が変わっているのではありません。低い空ほど大気を斜めに長く通り(大気減光)、その揺らぎが光を色ごとにばらけさせるためで、高く昇るほど落ち着きます。

見ごろの時期と南中高度

2月下旬の20時ごろに南中し、1月から3月の宵に南の低い空を通ります。シリウスの赤緯はマイナス16.7度で、東京(北緯およそ35.7度)の南中高度は約38度、札幌では約30度まで下がります。那覇なら約47度あり、南へ行くほど胴や後脚の星まで見やすくなります。南中の前後2時間が、またたきのいちばん落ち着く時間帯です。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

シリウスだけなら、市街地の空でも建物のすきまから見つかります。マイナス1.5等は光害にほとんど負けず、南が開いていれば日本のどこからでも昇ります。条件が要るのは形のほうで、後脚のε星(1.5等)は残っても、尾や胴をつなぐ3等台の星は街では抜け落ちます。南の低空は街明かりがたまりやすく、地平線から20度より下は等級ほどには見えません。

星座の中の見どころ

シリウスから真南へ約4度、双眼鏡の視野半分ほど下がったところに散開星団おおいぬ座M41があります。4.5等で満月ほどの広がりがあり、暗い空なら肉眼でも、ぼんやりしたしみとして分かります。双眼鏡では数十個の粒に分かれ、中心に赤みを帯びた星が1つ混じります。伴星のシリウスBは8等台で、離れていても本星の光に埋もれ、双眼鏡では分かれません。

出典

  1. 資料 大日本図書 青星

名前と物語

由来

ギリシャ神話では、どんな獲物も逃さない俊足の猟犬ライラプスと伝わります。ゼウスから贈られたこの犬は、決して捕まらない運命のテウメッソスの狐を追う羽目になり、追う者と逃げる者がともに運命を裏切れない矛盾に陥ったとされます。困り果てたゼウスが両者を石に変えて天へ上げ、この猟犬がおおいぬ座に、狐がこいぬ座になったという話が伝わっています。

和名と人が使ってきたこと

日本では、青白い光から青星、ほかに犬星とも呼ばれてきました。石川県輪島では、明け方に昇るころに強い風が吹くことから風星と呼び、兵庫県の播磨地方では、見え始める秋から沈む春先までがイカ漁の時期と重なることからいかびきぼしと呼んでいます。同じ一つの星が、風を読む地方では天気の前触れに、漁をする地方では漁期の目安にと、暮らしの違いでまったく別の役目を持ってきました。

正体と距離

シリウス1つに見えても、実際には2つの星です。主星は8.6光年先にあり、そのそばをシリウスBという白色矮星が回っています。質量は太陽とほぼ同じなのに大きさは地球ほどしかありません。主星のわずかなふらつきから1844年に存在が予言され、1862年に望遠鏡で実際に発見されました。伴星の光は、肉眼にも双眼鏡にも主星に埋もれて見えません。

変わるもの

古代エジプトでは、シリウスが夜明け前に初めて昇る日を、ナイル川の氾濫が始まる合図として暦に組み込んでいました。歳差運動によって恒星が昇る時期は少しずつずれていくため、数千年のあいだにはこの合図の日付そのものが動いてしまいます。今のたどりかたが使えるのも、地球の歳差運動が一巡りする2万6000年という周期のうちの、ほんのひと時にすぎません。