りゅうこつ座

冬の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

りゅうこつ座は、日本からは南の地平線ぎりぎりを通るカノープスだけが見える星座です。

形のたどりかた

形をたどる星座としては扱えません。竜骨の本体をなす星の大半が、日本の緯度では地平線の下にあります。たどれるのはα星カノープスただ一点で、シリウスから真南へこぶし三つ半ほど下げた地平線ぎりぎりを探します。おおいぬ座のシリウスが南中する時刻に合わせて南を向くのが唯一の道順で、南に山や建物があれば、その時点で探索は終わります。線でつなぐ相手のいない星座です。

目じるしになる星

視等級マイナス0.74で、シリウスに次いで明るい恒星です。ただし低空を通るため、実際には黄色や赤に濁って明滅します(星は写真のように色とりどりに見える)。この見え方から「南極老人星」「布良星」といった呼び名が各地に残りますが、いずれも俗称で、星座の名はりゅうこつ座のままです。シリウスの南中時刻を先に調べ、その前後だけ南の地平線を見るのが、取りこぼしの少ない手順です。

見ごろの時期と南中高度

星座の中心が20時に南中するのは3月下旬ですが、その位置は日本の空にありません。実際に探すのは1月下旬から2月にかけての宵で、東京では21時前後に南の低空を通ります。南中高度は東京でおよそ2度、那覇でおよそ11度です。南中の前後30分を外すと地平線に触れます。隣のとも座が横切る帯より、さらに一段低いところを通る対象です。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

赤緯マイナス52度41分という位置から、理論上の北限は北緯37度18分と決まります。計算上の境目は福島県のなかほどで、それより北では地平線の上に出ません。出る側でも高度が低く、大気減光でマイナス0.74等の輝きが1等星並みかそれ以下まで落ちます。南が水平線まで開けた海岸を選ぶことが緯度の不利を埋める手で、内陸では建物一つで消えます。

星座の中の見どころ

にせ十字の東半分にあたるι星とε星は2.2等と1.9等と明るいのですが、赤緯はどちらもマイナス59度台で、東京では地平線の下、那覇でようやく高度4度ほどです。散開星団IC2602はマイナス64度台にあり、日本のどこからも上がりません。西半分はほ座の側にあるので、みなみじゅうじ座と紛れるこの四つ星が日本の空でそろうことはありません。

出典

  1. 資料 NPO法人安房文化遺産フォーラム 富崎(布良)の神話②〜布良星

名前と物語

由来

星座としての物語はほ座やとも座と同じアルゴ船に連なりますが、いちばん明るいカノープスの名は別の伝承に由来します。トロイア戦争からの帰路についたスパルタ王メネラーオスの船を導いた水先案内人カノープスにちなむとされ、エジプトで没した彼を悼んで、星と町の両方にその名が残されたと伝わっています。

和名と人が使ってきたこと

房総半島南端の布良(千葉県館山市)では、冬の荒れた海で命を落とした漁師の魂が、南の低空に赤く輝くカノープスとなって帰ってくると語られ、布良星(めらぼし)と呼ばれてきました。この星が見える夜は海が荒れる前触れとされ、漁に出るかどうかを決める目じるしにされてきたと伝わります。隣の滝口では、入定した僧が時化の前にこの星として現れると言い残したという話も残っています。

正体と距離

見かけの明るさはシリウスに譲りますが、実際の明るさでは大きく勝ります。カノープスは約310光年先にある黄白色の超巨星で、本来の光の量は太陽のおよそ1万倍におよびます。シリウスより36倍も遠くにありながら、それでも2番目に明るい恒星として見えるのは、この桁違いの明るさのためです。見かけの順位だけでは、本当の姿までは測れません。

変わるもの

カノープスがいまどの段階にあるのかは、決着していません。水素を使い果たしたあとのヘリウム核融合をすでに始めているという説と、まだそこまで進んでいないという説があり、質量の大きい星の進化を精密にたどる難しさを、この2番目に明るい星自体が示しています。将来的には、この星もいずれ膨張と収縮を経て姿を変えていくと考えられています。