曲屋

屋根と間取りの型

主屋の一角からL字に厩が突き出した民家です。人の住む棟と馬屋を一つの屋根でつなぎ、寒い土地で馬を屋内から世話できるようにした形です。

どんな形か

主屋からL字に折れて突き出した棟を持ち、その先に厩を納めた民家です。突出部と主屋は屋根がつながり、上から見ると鉤の手に曲がります。曲がり角の内側に土間と馬屋の入口が来るため、炊事の場から馬の様子が見えます。国指定文化財等データベースでは「曲屋」の表記で拾え、岩手県遠野市の千葉家住宅、岩手県の旧菊池サイ家住宅、秋田県の草彅家住宅主屋がその例です。南部曲家、曲り家という呼び名はまだ一つに定まっていません。

なぜその形になったか

馬と暮らすためです。青森県東部から岩手県北部にかけての南部地方は馬の産地で、農耕にも駄賃稼ぎにも使う馬を家族と同じ屋根の下で飼いました。稲作に向かない冷涼な土地では馬を売って暮らしを立てた家が多く、馬は家財のうちでも大きいものでした。冬の寒さと吹雪の中を外の厩へ通うのは重く、主屋につなげば飼葉やりも見回りも屋内で済みます。

見分けの決め手

突き出した棟の先に何があるかを見ます。曲屋では突出部が厩で、人の入口は曲がり角の内側に開き、先端は壁で閉じます。屋根は主屋の平側から低く下りて連なり、棟が直角に交わります。岩手県遠野市の千葉家住宅のように、主屋と厩で棟の高さが一段違う例が多く、正面からは段差が読めます。妻側に破風板が二方向を向くのも手がかりで、大戸口の位置とあわせて見ます。

取り違えやすい相手

中門造です。どちらも主屋から棟が突き出しますが、先端に入口があるのが中門造、先端が厩で入口が曲がり角にあるのが曲屋という境目です。中門造では通り土間が突出部を貫いて主屋へ抜け、曲屋では土間が主屋側にとどまります。山形県や新潟県に多い中門造に対し、曲屋は岩手県と青森県東部に集まりますが、秋田県では両方が混じります。

どのあたりで見られるか

岩手県北部から青森県東部の旧南部領に濃く残ります。国指定文化財等データベースには岩手県遠野市の千葉家住宅、秋田県の草彅家住宅主屋が載り、神奈川県川崎市の川崎市立日本民家園には岩手県から移された旧工藤家住宅があって、こちらは重要文化財です。遠くまで足を運ばずに構えを見られるのは移築されたもので、住み続けられている家も多いため、道からの見学にとどめます。