力を入れてしっかり研ぐ?
洗う・浸す
「研ぐ」と「洗う」を比べても、飯の総合評価に有意差は出ませんでした。力を入れた側は米粒が砕けて、洗液へ溶け出す固形分が増えました。
言われていること
「手のひらで押しつけ、音が出るくらい研がないとぬか臭さが残る」という作法が、料理書や米穀店の店頭案内で長く語られてきました。ぬか層を落とすために洗う工程へ力をかける考え方で、とぎ汁の白い濁りを落ち具合の印にする説明が添えられます。研ぐという語そのものが、押しつける動作を前提にしています。檜作進 1970 の論文にも、念を入れて洗米しないとおいしい米飯ができないと書かれていました。
測るとどうか
貝沼やす子 ら 1990 が研ぐ方法と洗う方法を比べた実験では、飯の総合評価に有意差は認められませんでした。従来の研ぐ方法では米粒の表面が削られ、洗液へ溶け出す固形分が増え、米も砕けます。米粒が砕けたという結果は食味官能試験の点差ではなく、炊く前に失われた量として現れます。洗米方法は飯の食味に大きな影響を及ぼさない、というのがこれを引用した農林水産省のまとめです。
誰が・何を・どう測ったか
農林水産省「米の調理特性」が引用する貝沼やす子 ら 1990 の、研ぐ方法と洗う方法を比べた食味官能試験です。洗米の回数は同省が水を3〜4回替える、官能評価の手順がほぼ濁りがなくなるまで3回程度と書いています。研ぎの強さを段階に分けて比べたのではなく、二つの方法の対比である点には注意が要ります。評価人数の内訳までは公表されていません。
だからどうする
たっぷりの水の中で手早くかき混ぜ、水を3〜4回替えるまでにとどめます。手のひらで押しつけたり、音を立てて擦り合わせたりしません。器は大きめのものを選び、水を多く張ると米どうしが擦れにくくなります。回数を重ねるより、1回ごとに水をしっかり切るほうが濁りは早く減ります。米粒が砕けたときは洗うの回数ではなく力を下げ、炊いたごはんがにおうときだけ水を1回多く替えます。
まだ分かっていないこと
檜作進 1970 では念入りな洗米が必要とされ、いまは軽い水洗いで足ります。精米技術の進歩で前提そのものが入れ替わった論点ですが、精米の程度と必要な洗いの強さを結んで測った公開データは見当たりません。精米時期からの日数や分づき米の削り具合ごとに比べた資料も確認できておらず、年産や保管の違いを条件にした実験も見当たりません。
解説動画: 絶品!!! 普通の鍋でご飯を炊いてみた!!!/大島勲
研ぐより洗う: 動画は米を洗うところで、研ぐという意識は持たず、混ぜて洗うつもりで手を動かすと言います。理由に挙げるのは精米機の進歩で、昔のように擦り合わせると米粒が崩れてしまう。落としたいのは表面に付いた糠やごみで、そこまでで十分だという言い方です。炊飯器を使わず5年ほど鍋で炊いてきた人の手順として進みます。
お湯は使わない: 使う水についても一つ約束を置きます。お湯を使うと表面が早く柔らかくなって削れやすいので、洗うときは必ず水にする。ここは好みではなく決まりごとの側だ、という調子で言い切ります。洗い自体は水を替えて数回で切り上げ、濁りを見て終点を決めるような手間はかけていません。
ざるの上で擦らない: ざるは水を切るためだけでなく、割れた粒や細かい欠けを流すために使うと説明します。ただしざるの上で振ったり押しつけたりすると、そこで米が削れる。上から水をかけて流すだけにする、というのがここでの手順です。米粒が砕けた状態は、洗う力だけでなく道具の扱いでも作ってしまう、という話になっています。
白くなるまで待つ: 浸ける水は量らず、鍋にたっぷり入れて蓋をし、1時間置きます。動画は途中でマイクを近づけ、米が水を吸うときのぷちぷちという音を聞かせます。1時間後、半透明だった粒が芯まで白くなったことを映し、これで吸水が終わった合図だと述べます。冬は1時間、9月なら30分とも言うが、まとめて1時間にしたと添えます。
水は1.2倍で炊く: 炊く水はここで初めて量ります。吸水を終えた米に対して1.2倍という決め方で、3合なら3.6カップ。弱火10分のあと強火にし、沸騰したら火を半分に落として蓋をします。最後に火を止めて10〜15分蒸らす(炊き上がったら10分蒸らす)。手に力を入れる場面は、最後まで出てきませんでした。