浸水は2時間で吸水が止まる?
洗う・浸す
浸水は、20℃なら2時間で米が重さの20〜30%を吸います。
図: 浸した時間と、米が吸う水の進み方
檜作進(1970)の実測(20℃)。2時間で自重の20〜30%を吸い、30分でその約65%に達する。曲線は測った2点(30分・2時間)を通る形で描いたもので、その間の各点を測った値ではない。水温が下がるほど到達は遅くなる。
言われていること
「2時間を超えて浸すのは意味がない」という言い方が、料理書や炊飯器メーカーの案内で語られます。吸水には上限があり、そこから先は水を吸わないので待つだけになる、という説明で、前の晩から水に入れておく作法への反論としても使われます。米は一晩水につけておくとよいと並べて語られることが多くあります。
測るとどうか
20℃の水では2時間で米の重さの20〜30%を吸い、30分でその約65%に達したと檜作進 1970 は書きます。農林水産省も吸水率は20〜25%程度、約2時間で飽和と記します。坂本ら 2015 では、20℃以上の水は80分あたりからほぼ平衡でしたが、5℃と10℃は4時間まで微増しました。炊飯前にすべて吸わせる必要はなく、炊き始めに温度が上がる間に急に吸う、とも檜作は述べます。
誰が・何を・どう測ったか
檜作進 1970 の総説と農林水産省「米の調理特性」(30℃は5℃より短時間で飽和)に、坂本ら 2015 を重ねました。坂本らは岐阜県産コシヒカリの精白米30gを5〜50℃の水に5〜240分浸し、洗米せずに浸漬吸水率の測定を行っています。食品総合研究所(現・農研機構)の1994年の成果情報も、5・15・25℃で120分に吸水量が一定になったと報告します。測ったのは吸った水の量で、味ではありません。
だからどうする
30〜60分つけたら炊きます。それ以上待っても吸水はほとんど増えないので、時間を延ばすより水温を選ぶほうが効きます。都合で長く置くなら冷蔵庫で浸すに切り替えます。炊飯器にまかせるなら、マイコン式には40〜50℃で15分ほど吸水させる工程を持つ機種が多く、予備浸水なしで炊けます。玄米を浸す場合は、森井 2021 の3品種で4時間でも吸水が平衡に届かず、この目安の外になります。
まだ分かっていないこと
食味官能試験で2時間と一晩を並べて比べた公開データは見当たりません。COCOCOROチャンネルの大西哲也は0分・15分・1時間・12時間を同じ条件で炊いて2人で食べ比べ、自身は15分が好みだったと話しますが、2時間は含まれません。森井 2021 が調べた3品種は最大吸水率が違い、それ以外の品種の飽和点は示されていません。飽和したあとの時間が味に効くのかは、まだ測られていません。
出典
- 公的機関 農林水産省 米の調理特性
- 論文 檜作進(調理科学)(1970) 炊飯とでんぷんの老化
- 論文 坂本薫・森井沙衣子・上田眞理子(日本調理科学会誌)(2015) 炊飯における温水浸漬と低温浸漬が米の吸水率に与える影響
- 論文 森井沙衣子(日本調理科学会誌)(2021) 炊飯における浸漬に関する研究
- 公的機関 食品総合研究所(現・農研機構)(1994) 米の浸漬温度・浸漬時間の調節による加工米飯の食味および食味保存性の向上
- 動画 COCOCOROチャンネル 米の浸水時間によって味は変わるのか。一番美味しい浸水時間は○○分でした。ベストの時間を検証します。