相手と利害がぶつかるときの読みどころ。
対戦ゲームや将棋で、相手と得を取り合う場面では、三つを順に決める。まず、相手の得がそのまま自分の損になる形かを確かめる。次に、ぶつかる所での力の差を数え、攻める・並ぶ・退くのどれを取るかを決める。最後に、攻めを止める目安を先に置く。優勢・拮抗・劣勢で取る手が変わるのは、二つめの段の答えが変わるからである。
形の確かめにはゼロサムゲームを使う。三目並べのように、片方が良くなるには相手を悪くするしかない形なら、利害は真正面からぶつかる(スタンフォード哲学百科事典「Game Theory」)。二人とも引かないと、取り合った物より損が大きくなる形もある。こちらはタカ・ハトゲームに当たり、どちらか一方が引けば、ぶつかり合いの損を避けられる。中立の目標を両陣営で取り合う対戦ゲームの場面は、どちらの形かを先に見分けておく。
力の差の数え方は、謀攻篇の一句にある。原文は「十則圍之,五則攻之,倍則分之,敵則能戰之,少則能逃之,不若則能避之」である(十倍なら囲み、五倍なら攻める)。十倍なら囲み、五倍なら攻め、倍なら分け、同じなら戦い、少なければ退き、及ばなければ避ける。句は「故小敵之堅,大敵之擒也」と結ぶ。小さな軍が意地を張って踏みとどまれば、大きな軍の虜になる。劣勢のときに避ける手は、句の中に初めから並んでいる。対戦ゲームで数えるなら、盤やマップの全体ではなく、ぶつかる地点の味方と相手の数を比べる。
拮抗しているときは、先に負けない形を作る。形篇の冒頭は「昔之善戰者,先為不可勝,以待敵之可勝」で、「不可勝在己,可勝在敵」と続く(形篇)。自分のミスを減らすことは自分で決められるが、相手が崩れるかは決められない。同じ力どうしの読み合いには、混合戦略の考え方も効く。プロのサッカーのPKでは、左右どちらに蹴っても勝つ確率は統計的に同じで、選択は前の回に引きずられていなかった(Palacios-Huerta 2003)。読まれる癖を作らないことが、拮抗の場面での守りになる。
優勢のときに気をつけるのは、攻めの境目である。防御は、それ自体としては攻撃より強い形である(防御という戦争の強い形式、『戦争論』第六篇第一章)。同じ章は、防御を使うのは弱いあいだだけで、積極的な目的を立てられるほど強くなれば離れるべきだとする。一方で攻める側の力は、進むほど目減りする(攻撃の力の漸減)。優位がそれ以上大きくならない地点を、第七篇第五章は攻撃の頂点と呼ぶ。越えた先では、押し返しがはじめの攻めより強くなることがある。優勢の側は、攻め込む前に、味方の数が並ばれたら戻る、のように引き返す目安を数で決めておく。
やりがちな失敗は三つある。劣勢なのに意地を張って踏みとどまる。拮抗の場面で同じ手を繰り返して読まれる。優勢のまま境目を越えて攻め続ける。三つとも、ぶつかる前に数え、引き返す目安を決めておけば防げる。
出典
- 資料・英語 Stanford Encyclopedia of Philosophy Game Theory
- 資料・中国語 維基文庫(曹操ほか十一家注) 十一家注孫子 謀攻篇
- 資料・中国語 維基文庫(曹操ほか十一家注) 十一家注孫子 形篇
- 論文・英語 Ignacio Palacios-Huerta, The Review of Economic Studies 70(2): 395-415(2003) Professionals Play Minimax
- 資料・ドイツ語 clausewitzstudies.org(編者 Christopher Bassford) Carl von Clausewitz: VOM KRIEGE, Book 6
- 資料・ドイツ語 clausewitzstudies.org(編者 Christopher Bassford) Carl von Clausewitz: VOM KRIEGE, Book 7







