ダウンシュラフ

寝袋・マット

ダウンシュラフは、軽くて小さくなる冬の主力の寝袋。

どんな道具?

ダウンシュラフは、水鳥の羽毛を詰めた寝袋です。ただし保温は羽毛の量だけで決まりません。An ら(2022年)の研究は、一般的な寝袋の4つの構造を計測と人の体感で比べ、生地のすき間の多さと内張りの長さが熱抵抗に大きく効いたと、要旨で報告しています。寝袋全般の研究で、ダウンだけを調べたものではありません。MyLifeOutdoors(YouTube・英語)は、箱型に縫った仕切り(ボックスバッフル)が縫い目の冷たい点を減らすと説明しています。表示の数字だけでは見えない差が、作りにあるということです。

選び方

表示は快適温度(comfort)を見ます。MyLifeOutdoors(YouTube・英語)は、規格上の comfort は平均的な女性が一枚着て快適に眠れる温度、limit は平均的な男性が丸まって少し寒さを感じながら眠れる温度だと説明しています。Stephen J Reid(YouTube・英語)は、表題の数字が comfort とは限らないと注意しています。例えば Rab Trail 400 は、表題が −7 でも comfort は −1 でした。Reid は、想定する最低気温より約二度余裕を見て、comfort の数字で選ぶよう勧めています。

使い方のコツ

寝袋の中で息をすると、湿った息が羽毛に入って保温が落ちます。Stephen J Reid(YouTube・英語)は、口を袋の外に出し、顔まで入れるのは寒い夜だけにすると話しています。寝袋は入ったときの体の状態を保つので、冷えたまま入ると暖まりにくいと説明しています。足元や背中に化学カイロを入れると効果が大きく、インナーシーツは表示ほど暖かくなく絡まりやすいので、ダウンのズボンや上着を重ねるほうが動きやすいとも話しています。冬用のマットはR値5前後が目安だと、Reid は話しています。

手入れ・注意

火器やストーブの近くに置かない。たろーキャンプ(YouTube)は、寝袋をストーブに当てて穴が開いた話を何度か聞いたと話しています。ナンガは永久保証を付けていて、穴が開いた程度なら無償で直してもらえる場合が多いと紹介しています。購入後にダウンを増量できる例もあると話しています。ただし、日本製ではない別注モデルは対象外になる場合が多いので、買う前に商品ページで保証の対象を確かめてください。たろーキャンプはナンガを勧める立場で、保証の範囲は製品ごとに違います。

出典

  1. 動画・英語 MyLifeOutdoors Quality Down Sleeping Bag Under $200 - The North Face Eco Trail Down 20°F Review
  2. 動画・英語 Stephen J Reid Watch This BEFORE Buying a Sleeping Bag for Camping
  3. 動画 たろーキャンプ ナンガのダウンシュラフを誰よりも詳しく解説!NANGAの寝袋の選び方やおすすめモデルも紹介!
  4. 論文・英語 An Y., Xu G., Shen H.(2022) The influence of structure on the thermal properties of sleeping bags

解説動画: ダウンシュラフを長持ちさせる手入れ(初級編)/ノアソビ【CAMP超解説】

概要: 汚れてから落とすのではなく、最初から汚れない仕組みを作る「予防清掃」の考え方をダウンシュラフに当てはめた手入れ講座。ダウンシュラフの寿命はおおよそ10年とされるが、永久保証の付くメーカー品なら手入れ次第で長く使えるという立場を取る。購入直後にやること、使うたびの手入れ、収納保管の順に解説していく。

防水スプレーはフッ素系だけ: 多くのシュラフは撥水加工や防水コーティングが済んでいるが、きれいなうちにフッ素系の防水スプレーをかけておくと汚れを防ぎやすい。ただしシリコン系は絶対に使わない。繊維同士の隙間を埋めてしまい通気性も透湿性も失われるため、ビニールにくるまって寝るのと同じで蒸れ、汗がシュラフ内にたまる。フッ素系は繊維を一本ずつ覆うので隙間が残り、通気性と透湿性を保てる。

スプレーのかけ方と乾燥: 距離は20〜30cm離し、2〜3秒ほど吹くのが目安。中の羽毛が湿るほどかける必要はなく、至近距離で大量に吹いても蒸発するだけで効果は強まらない。乾いて初めて撥水効果が出るため、塗ったあと20〜30分は乾かしてから使う。乾かしてもう一度重ねると被膜が二重になり効果が上がる。密閉空間での使用は厳禁で、吸い込むと呼吸困難を起こす危険があるので、屋外で風下に人がいないことを確かめてから吹く。

汗と皮脂がいちばんの敵: 人は寝ている間にコップ1杯(約200cc)ほどの汗をかき、その汗と顔や首筋の皮脂が生地から羽毛へ移っていく。羽毛に脂が付くと空気を含めなくなって保温力が落ち、湿気とともに雑菌が繁殖して臭いや劣化を招く。対策としてインナーシュラフを内側に入れ、汚れをそちらで受け止める方法を挙げる。市販品のほか、軍の払い下げ品や大判のブランケットを二つ折りにした代用も紹介している。 あわせて使用後は首まわりと足元をぬるま湯で湿らせて固く絞ったタオルで拭くことを勧める。油汚れは2週間置くと洗浄効果が半分ほどまで落ちるという研究を引き、汚れていなくても毎回拭くのがよいとしている。

乾燥は陰干し、保管は圧縮しない: 使用後は湿気を確実に飛ばす。ただし天日干しは避ける。生地のナイロンやポリエステルは紫外線で退色・劣化するため、風通しがよく直射日光の当たらない場所で陰干しする。布団たたきで叩くのも生地を傷めるだけで意味がない。収納はきれいに畳まず足先から無造作に押し込むのが正解で、整えて畳むと羽毛が偏る。スタッフサックに入れたままの圧縮保管はロフトを損なうので、ゆとりのあるストレージサックに入れ、湿気のこもらない場所にしまう。

解説動画(海外・英語): Down vs Synthetic Sleeping Bags: The Ultimate Comparison Guide/PoshBags

ダウンの強み:圧縮性、軽さ、そして寿命: ダウンは化繊よりはるかに小さく圧縮でき、スタッフサックに押し込める。軽さと合わせて、これがバックパッカーにダウンが選ばれる理由。細い枝分かれした繊維の構造でよくロフト(かさ)が立ち、断熱が効くので、同じ体積を埋めるのに必要な量が化繊より少なく済む。さらに手入れさえすれば何年、場合によっては何十年と暖かさを保つので、長く使う前提なら投資に見合う。

ダウンの弱点:濡れ、そして潰れた部分: 最大の弱点は濡れると断熱しなくなること。雨や湿気の多い場所によく行くなら問題になり、とくにタープ泊で大雨に降られる形だと危ない。乾いた寒さの環境なら、それでもダウンを選ぶ人が多い。もう一つは体の重みで潰れた部分は冷たい点(コールドスポット)になること。これは下にフォームマットやエアマットをもう一枚敷いて断熱層を足すのが基本の対処。

フィルパワーとは何の数字か: ダウンを調べると必ず出てくるフィルパワーは、ダウンがどれだけロフトを持つか=どれだけ熱を抱え込めるかを実験室で測った値。具体的には1オンス(約28g)のダウンが何立方インチを満たすかという数字で、800フィルパワーなら1オンスで800立方インチを満たすという意味になる(動画中の言い回しは数値の桁が揺れているが、定義はこれ)。

化繊の強み・弱み、そして選び方: 化繊の最大の利点は濡れても断熱がある程度残ること。もちろんびしょ濡れなら素材を問わず寒い思いをするが、同じ濡れ方ならダウンより暖かく、乾くのもずっと速い。撤収や帰宅後の洗濯も早く終わる。弱点は圧縮性が低く、同じ体積を埋めるのに量が要るので重く硬くなること、そして繊維が早く劣化し、5〜7年ほどでへたりが出ること。圧縮したまま長期保管すると寿命をさらに縮める。化繊を調べるときはコンティニュアスフィラメント(長い繊維を織り合わせたもの。ロフトと耐久性が高い)か、短繊維(ショートステープル)かも見ておくとよい。