楽しかった所・面倒だった所を分けて書く。
やってみて振り返る作業は、最初の1回を終えた当日に、楽しかった所と面倒だった所を2つに分けて書き出すことです。1行の感想にまとめてしまうと、どちらの材料も残りません。楽しかった所は、次も続けるかどうかを決める材料になります。面倒だった所は、次までに手間を減らす段取りの材料になります。役目が違うので、紙でもメモでも欄を分けて書きます。
書く順番には型があります。やってみる・振り返る・結論を出す・やり方を変えてもう一度やる、という4段階の循環は、米国の教育理論家デイビッド・コルブが経験からの学習を整理したものです(Cheryl Reynolds)。ギブスの振り返りの循環と呼ばれる6段階の型もあり、事実の描写・感じたこと・良かった点と良くなかった点の評価・原因の分析・次に変えることの結論・行動の計画という順に進みます(EPM)。最初の1回なら、事実・気持ち・次に変えることの3行で足ります。
楽しかった所は、終わったあとの達成感ではなく、やっている最中の手ごたえを書き残します。身体活動の研究を24件集めた系統的レビュー(2015年)では、中くらいの強さの運動の最中に気分が良い方向へ変わった人は、のちの運動量が多いという関連が示されました。一方で、運動が終わったあとの気分は、のちの運動量とは関係がありませんでした。対象は身体活動に限られ、趣味全般にそのまま広げられる結果ではありません。それでも、最中のどの場面で気分が上がったかを1つ書き出すほうが、次に同じ場面を作りやすくなります。
面倒だった所は、準備・移動・片づけの3つに分けると手が打てます。移動が重いなら場所を近くに替え、準備が重いなら道具の置き場所を作業する場所へ寄せます。記録そのものも面倒の種になるので、記録用ノートには日付・やったこと・次に変えることの3行だけを書きます。手元の動きを見返したいときは、スマホ三脚・アームで固定して撮ると、両手を空けたまま残せます。
書いたものは捨てずに残します。目標の進みを測らせる働きかけを調べた無作為化研究138件・参加者1万9,951人分を集めたメタ分析(2016年)では、働きかけが目標の達成を高め、結果を人へ報告した場合と、進みを紙などに書き留めた場合に効果が大きくなりました。頭の中だけで思い返す形より、書いて残す形のほうが次の1回につながります。
良かった所を先に書くのは、読み返せる記録にするためです。日ごと・週ごとに記録をつけさせた実験(2003年)では、恵まれていることを数え上げた群が、煩わしかったことを書いた群などと比べ、いくつかの指標で幸福感が高く、前向きな気分での差がもっとも一貫していました。趣味を対象にした研究ではありませんが、面倒だった所だけが並ぶ記録は、読み返す手が止まります。
やりがちな失敗は4つあります。1回の出来で向き不向きを決めてしまうこと、記録の書式を凝って作り込んで書かなくなること(完璧主義でつぶれる)、面倒だった所を道具の買い足しで片づけようとすること(道具沼にはまる)、人の作品や記録と引き比べて筆が止まること(人と比べて嫌になる)です。間が空いた日を責める書き方も、記録そのものをやめる入口になります(三日坊主の正体)。
振り返りの型そのものの効き方は、まだはっきりしていません。医療系の教育で広く使われている一方で、根拠は理論に偏り、どの進め方が効くかは定まっていないという整理が出ています(系統的レビュー、2009年)。6段階の型にも、起きたことへの後追いになりやすく、感情を言葉にしにくい人には進めづらいという弱点があります(EPM)。型をそろえること自体を目的にせず、3行の記録を次の1回まで残すほうを先にしてください。
出典
- 論文・英語 Rhodes RE, Kates A(2015) Can the Affective Response to Exercise Predict Future Motives and Physical Activity Behavior? A Systematic Review of Published Evidence
- 論文・英語 Harkin B, Webb TL, Chang BP, Prestwich A, Conner M, Kellar I, Benn Y, Sheeran P(2016) Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence
- 論文・英語 Emmons RA, McCullough ME(2003) Counting blessings versus burdens: an experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life
- 論文・英語 Mann K, Gordon J, MacLeod A(2009) Reflection and reflective practice in health professions education: a systematic review
- 動画・英語 EPM Gibbs' Reflective Cycle Explained
- 動画・英語 Cheryl Reynolds The 3 minute Kolb

