長く続けられる趣味と、人とのつながり。
定年の前後で趣味を選ぶときは、長く続けられるかと、人と会う場があるかの2つを先に見ます。仕事が減ると、毎週決まって顔を合わせる相手も一緒に減るためです。内閣府の令和4年版高齢社会白書では、過去1年に社会活動へ参加した65歳以上は51.6%で、内訳は体操や歩こう会などの健康・スポーツが27.7%、俳句・詩吟・陶芸などの趣味が14.8%でした。参加して良かったことは「生活に充実感ができた」が48.8%で最も多く、「新しい友人を得ることができた」が39.1%で続きます。
人と一緒にする形を1つ混ぜる理由は、追跡調査にもあります。日本老年学的評価研究(JAGES)で65歳以上の約5万1千人を6年追った研究では、余暇の活動をグループでしていた人は、1人でしていた人より認知症を発症した割合が低く(ハザード比0.79)、余暇の活動が無い人は高い(1.30)という結果でした(Lingling ら 2023)。16か国の約9万3千人を調べた研究でも、趣味を持つ65歳以上は抑うつの症状が少なく、生活の満足度が高い傾向がありました(Mak ら 2023)。どちらも観察の研究で、趣味が原因だとまでは言えません。それでも、1人で完結する趣味だけで固めない理由にはなります。
決める順番は、候補を試す、人と会う場を決める、体を動かすものを足す、の3段です。候補は退職の前から挙げ、体験してから決める手順で週末に1回ずつ試しておきます。退職してから探し始めると、空いた時間の大きさに押されて、最初に見つけたものにまとめて費用をかけやすくなります。
人と会う場は、公共施設を使うのが入口として手軽です。公民館や自治体の講座は費用が低く、同じ顔ぶれと決まった曜日に会えます。仲間の見つけ方と先生に習うかどうかも、そこで決めます。囲碁や将棋のように相手のいる趣味や、句会のある俳句・短歌は、通う日がそのまま1週間の予定になります。
体を動かすものは、強さを自分で選べるものから足します。ウォーキング・散歩やヨガ、ストレッチは1人でも教室でもでき、白書で参加が最も多かった健康・スポーツの活動にも当たります。仕事の代わりに予定が空くので、曜日と時間を固定すると、生活の区切りの役も果たします。
やりがちな失敗は2つです。1つは、時間ができたからと最初から上級者向けの道具をそろえることで、趣味予算の決め方で年間の上限を先に決めておくと防げます。もう1つは、仕事と同じ調子で成果や上達を求めることです。完璧主義でつぶれる形で、上達しない時期に嫌になってやめてしまいます。週に1回、同じ人と会えていれば続いている、という基準で始めると、やめる理由が減ります。
出典
- 公的機関 内閣府(2022) 令和4年版高齢社会白書 第1章第3節 3 社会活動等への参加について
- 論文・英語 Lingling, Tsuji T, Ide K, Kondo K(Preventive Medicine)(2023) Group leisure activities are associated with a lower risk of dementia than individual leisure activities: A 6-year longitudinal study from the Japan Gerontological Evaluation Study (JAGES)
- 論文・英語 Mak HW, Noguchi T, Bone JK ほか(Nature Medicine 29)(2023) Hobby engagement and mental wellbeing among people aged 65 years and older in 16 countries





