初めてで起きやすい失敗

詰め込みすぎ・休まない・沈黙を怖がる、の防ぎ方。

初めてのドライブでつまずく所は三つに偏ります。予定を詰め込みすぎること、遅れを休憩から取り戻すこと、沈黙を会話で埋めようとすることです。防ぎ方は出発前の三つの決めで足ります。道中で使うお題を一本に絞る、休憩を寄り道と兼ねる場所に置く、黙っていてもよいと先に伝える、の順で決めます。

用意した話題を全部こなそうとすると、運転する人に重い問いが続きます。21〜24歳の男性10人が運転のシミュレータで走り、携帯電話での通話・同乗者との会話・会話なしを比べた研究では、会話なしの条件のミス率が全員0%で、会話が起きると条件の違いを問わずミス率が上がりました(2019年、岡山大学のDoi ほか)。難しい質問の条件では、相手が同乗者でも電話でも、運転への集中の度合いが会話なしより有意に下がっています。会話の方法による差は出ていないので、同乗者との会話だから軽いとは言えません。価値観を深掘りする質問や哲学的な問いで語り合うお題は、答えを急がない一本だけを道中に置き、残りは休憩と帰り道に回します。言葉を探す必要がある英語のお題で会話するときは、同乗者が声に出す側を持つ形にします。

寄り道を現地で足すと、道探しと会話が重なる場面が増えます。カナダの若い運転者を対象に、同年代の女性の同乗者が質問をしながら道を案内する条件・同乗者が黙っている条件・ひとりで走る条件を比べた2011年の模擬運転の報告では、速度の調整と道探しの行動が、質問のある条件で悪くなりました。車線の位置のばらつきと反応時間はかえって小さくなり、運転者が周囲へ視線を動かさなくなっていた表れだと著者は述べています。若い運転者では同乗者による気の散りを減らすことが大切だ、という結びです(Toxopeus ほか)。

遅れが出たとき、最初に削られるのが休憩です。長い時間を走る日は最低でも2時間に1回休み、疲れを感じる前に車を降りて外の空気を吸い、体を軽く動かすようすすめられています(JAFの質問箱)。休憩を予定の最後に置くと削る対象になるので、寄り道と兼ねる場所に先に置きます。一般道なら道の駅が、交通事故防止のため24時間使える休憩施設で、車内での仮眠も認められています(国土交通省)。高速道路ならパーキングエリアはおよそ15kmごと、サービスエリアはおよそ50kmごとに置くのが目安です(NEXCO東日本)。道の駅めぐりやサービスエリアグルメめぐりを行程に入れておけば、止まる理由が予定の側に残ります。写真スポットを巡るやスタンプ集めも、休憩の場所そのものを目当てに変えられます。

休む理由は眠気だけではありません。話が続かない・苛立つ・退屈だと感じた時点で、一度止める手があります。不安への対処を説明したニューヨーク大学の神経科学者は、短い散歩や好きな曲で踊ることを挙げ、10分歩くだけで気分が上向く効果が得られるという研究があると述べています。4秒かけて吸い、4秒止め、4秒かけて吐き、4秒止める呼吸も紹介しています(TEDの連載)。運転の研究ではありませんが、車内で気まずさを埋めようとするより、降りて歩く時間に替えるほうが手がかりがあります。

沈黙は失敗ではありません。商用のトラックとバス6,379台の4か月分の走行の記録を解析した2015年の報告では、同乗者との会話が、安全に関わる出来事の危険を有意に高めていました。同時に、運転中に話していた時間が長い運転者ほど、その出来事に関わりにくい傾向も出ています(Hickman ほか。業務運転の観察で、原因とは言えません)。黙っている時間は、運転する側には楽な時間です。沈黙を埋める役は同乗者が持ち、運転する人は短く答える側にとどめます。昔話・思い出語りやなぞなぞ・クイズを出し合う遊びは、出す側と判定する側を同乗者に渡します。もしもトークで妄想する遊びは、答えが短くても成り立ちます。出発前に「黙っていてもよい」と伝えておけば、埋める必要そのものが消えます。

やりがちな失敗は三つあります。用意したお題を最後まで使い切ろうとすること、遅れを休憩から取り戻すこと、途切れた会話を次の話題で埋め続けることです。出発前に決めるのは、お題を一本・止まる場所を一か所・黙ってよいという一言の三つだけです。

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出典