帰ってから
疲れの取り方と、次に生かす振り返り。
帰り着いてからやることは三つです。車の中を空にする、長く座っていた体を戻す、その日の事実を短く残す、の順に片づけます。この順番にするのは、荷物は時間が経つほど出さなくなり、記憶は翌朝にはぼやけるからです。玄関で座り込む前に、まず車へ戻ります。
夏に走った日は、車内に残す物を選びます。8月の晴天・外気温35度で測った記録では、窓を閉め切った黒いミニバンの車内が15時ごろに55度を超えました。使い捨てライターは2〜3時間でケースに亀裂が入ってガスが抜け、クレヨンは約1時間で溶け始めています。スプレー缶は破裂しませんでしたが、可燃性の高い物は車内に放置しないよう求められています(JAFの質問箱)。降りるときに持ち出すのは、ライターとスプレー缶、それに高温で機能が止まる携帯電話です。子どもや高齢者を車内に残さない注意も、同じページにあります。
体は足から戻します。水分を十分に取らない状態で狭い座席に長時間座り、足を動かさないと、血行不良が起こって血液が固まりやすくなります(厚生労働省のエコノミークラス症候群の予防のページ。監修は日本赤十字社熊本健康管理センター)。予防に挙げられているのは、軽い体操やストレッチ、こまめな水分、アルコールを控えてできれば禁煙すること、ゆったりした服装、かかとの上げ下ろしとふくらはぎをもむこと、眠るときに足を上げることの六つです。帰ってからできるのは後の三つで、時間や回数の数字はページにありません。
帰り道で眠気と戦った日は、着いてからの眠りを削りません。夜勤明けの帰宅の運転では眠気が強まり、眠気が強い段階に入ったら運転をやめるのが安全な対策です(1999年のレビュー、HorneとReyner)。30分の休憩に15分未満の仮眠かコーヒー1杯程度(カフェイン約150mg)を組み合わせると眠気に効果的で、冷たい空気やラジオの効きは一時的、運動はほとんど役に立ちません(同)。眠りは前触れなく始まることがあり、眠った本人が覚えていないことも多いと整理されています。家に着いてからの眠気も、体を動かして散らすより眠って戻すほうが筋が通ります。
残す事実は三つで足ります。出発と到着の実際の時刻、休んだ場所、同乗者が退屈したり酔ったりした区間です。長い感想文にはしません。オンラインの教材に短い振り返りの時間を組み込み、中等学校の生徒を2群に分けて比べた2014年の実験では、成績に有意な差は出ず、課題に費やした時間と学んだ実感のほうに差が出ました(VerpoortenとWesteraの報告)。教室の実験でドライブを測ったものではありませんが、振り返り自体が成果を押し上げるとは限らないので、次の計画でそのまま使える事実だけを書き留めます。地図アプリの表示時間ではなく、実際にかかった時間が次の見積もりの材料になります。
帰り道を内省する時間にすると決めているなら、気分が沈んだ日だけ家に回します。20〜24歳の男性運転者40人を沈んだ気分と中立の気分に分けた模擬運転では、沈んだ気分で運転中の心のさまよいが増え、反すうの傾向が強い人ほど関係が強まりました(2022年の実験)。さまよっている間は、車間距離のばらつきとハンドルの切り返しが増えています。疲れが出た日の次の一手は、休憩を1回足すか、話す軸を降りることです。音を消して無心で運転に集中する形で疲れを持たせるのは、対策になりません。自動運転を見守るだけの退屈な条件を作った大学生108人と168人の実験では、課題への関与と覚醒が下がり、急な危険へのブレーキとハンドルが遅れ、衝突の確率も上がりました(2013年の模擬運転)。
やりがちな失敗は三つあります。荷物と記録を翌日に回すこと、疲れは寝れば戻ると流して足を動かさないこと、楽しかった場所だけ覚えて実際にかかった時間を残さないことです。
この節に出てくる図鑑の項目
出典
- 真夏の炎天下の車内はどのくらい温度が高くなりますか?
- エコノミークラス症候群の予防のために
- Vehicle accidents related to sleep: a review
- Structured reflection breaks embedded in an online course – effects on learning experience, time on task and performance
- Negative mood mind wandering and unsafe driving in young male drivers
- Active and passive fatigue in simulated driving: discriminating styles of workload regulation and their safety impacts
