北アメリカ星雲
星雲
見え方: 空が暗ければ双眼鏡で
広いことは、見えやすさとは別の話です。満月十個ぶんを超える面積に光が薄く延びているため、肉眼ではまず天の川の地の色と区別がつきません。
何がどう見えるか
見えるのは、天の川の中でわずかに明るいむらです。差し渡しは120分角×100分角、満月十個ぶんを超える面積になりますが、その広さに光が薄く延びているぶん一点あたりの明るさは周りの天の川とほとんど変わりません。大陸の輪郭にあたる暗い切れこみが分かれるかどうかは、空の暗さがそのまま決めます。
探しかた(目じるしからの道順)
はくちょう座の尾にあたるデネブが起点です。そこから東へおよそ3度、天の川の帯に沿って視野をずらすと入ります。デネブを視野の西の端に置いたまま、ゆっくり動かすと外しません。探すのは輪郭のある形ではなく天の川の地の色よりわずかに明るいむらなので、視野を止めるより、行き来させて濃さの変わる場所を捉えるほうが分かります。ただし街明かりの下では天の川そのものが消えるため、目じるしから先の道が辿れなくなります。
双眼鏡で何が増えるか
視野の広さが、そのまま見えやすさになる珍しい相手です。実視界が3度前後ある低倍率なら星雲全体が視野に収まり、周りとの濃さの差として浮かびます。倍率を上げると視野が星雲の内側だけで埋まり、比べる相手を失って何も分からなくなります。広い天体ほど倍率を下げるという原則が、いちばんはっきり出る例です。
写真との落差
写真の北アメリカ星雲は、赤い大陸とメキシコ湾にあたる黒い切れこみがくっきり写ります。この赤は水素のHα線の色で、長時間露光で溜めて初めて出るものです。暗所視では色を感じる細胞が働かず、灰色の濃淡しか受け取れません。形が分かったという話も、写真を先に見てから探した目の話であることが少なくありません。
正体
はくちょう座の方向にある水素ガスの雲が、近くの若い星の紫外線を浴びて光っているものです。距離はガイア衛星の観測で2590±80光年、2020年に出た値です。長らくデネブが光源とされてきましたが、表面温度が水素を光らせるには足りないことから今は退けられています。実際の差し渡しは100光年ほどになります。