かに星雲

星雲

見え方: 空が暗ければ双眼鏡で

この図鑑の中で、双眼鏡での下限に置く相手です。8.4等の光が7分角ほどの面に散っており、空が暗く目が慣れていなければ背景に埋もれます。

何がどう見えるか

淡い楕円の、輪郭のぼやけたしみです。等級は8.4等、大きさは420秒角×290秒角で、差し渡し7分角ほどにしかなりません。郊外の空では背景と区別がつかず、星の間の何もない場所に見えます。名の由来になった触手のような筋も、この口径では一本も分かれません。空が暗ければわずかに膨らんだ灰色の光として気づけます。

探しかた(目じるしからの道順)

おうし座の角の先、3等のゼータ星が起点です。そこから北西へおよそ1度で、ゼータ星を視野の南東の縁に置くと、反対の縁の内側に入ってきます。ただし目じるしの星が明るいぶん、視野に入れたままだと目が眩んで淡い光を取りこぼします。暗順応を切らさないことが、この相手ではそのまま結果を分けます。

双眼鏡で何が増えるか

双眼鏡が増やすのは、あるかないかの判定だけです。50ミリ級で光を集めても形も色も内部の濃淡も出ず、背景よりわずかに明るい面が残るに過ぎません。視野をゆっくり揺らすと、流れる背景の中で取り残される淡い光として拾えることがあります。そらし目も同じ理屈で、視線を数度外したほうが捉えやすくなります。

写真との落差

写真のかに星雲は、オレンジの筋が網目に走り、内側が青い光で満ちた姿で写ります。この長時間露光の色は、水素の筋と、中心のパルサーが吹き出す電子の光を別々に溜めた結果です。目に届くのは色のない灰色の面だけです。写真の網目を先に覚えて探すと、見えていないものを見えたと思い込む向きへ引っぱられます。

正体

1054年に現れた超新星の残骸です。中国の『宋史』は昼でも見えたと記し、日本では藤原定家が『明月記』に陰陽師から報告された客星の記録を書き写しています。定家自身が見た記録ではありません。この日本の記録を1934年に海外の雑誌へ紹介したのが射場保昭で、距離はおよそ6500光年、日本天文学会の天文学辞典による値です。