強弱の付け方
表現の技
音量の大小で曲に流れを作る組み立て
どういう技術?
同じ声のまま音量の大小を作ることです。いちばん伝わりやすい表現のひとつでありながら、忘れられがちです。息の圧力と声帯の閉じ具合を変えて、小さくても芯のある声と大きくても割れない声を行き来します。採点では抑揚の付け方として数値になりますが、本来は曲の意味に沿って付けるものです。出せる音量の幅が、そのまま表現の幅になります。
やり方
曲を3つの段落に分け、いちばん強い1か所を先に決めます。そこ以外は七割の音量で歌い、決めた場所だけ息の量を増やします。小さくするときは声をひそめるのではなく、マイクを2〜3cm近づけて音量を保ちます。強い場所を2つ以上作ると、どちらもぼやけます。
練習のしかた
5分。同じフレーズを小・中・大の3段階で歌い分け、録音で3つの差が分かるか確かめます。差が出ないときは大きい側だけで調整しがちなので、小さい側を作る練習を先にします。曲の中で自然に動くまでは1〜2か月。毎回同じ曲で試すと違いが分かりやすいです。
やりがちなミス
ずっと全力で歌うと、聞く側は数曲で疲れます。逆に小さくしすぎると音量バランスの問題と見分けがつかず、マイクが拾わないだけになります。強弱を語尾でだけ付けるのも不自然なので、フレーズ単位で設計します。部屋のエコー量でも聞こえ方は変わるため、曲の頭で一度確かめておきます。
解説動画: 【歌が上手くなる】抑揚のつけ方【やさしさで溢れるように/JUJU】/しらスタ【歌唱力向上委員会】
音量では抑揚は付かない: 「Aメロは小さく、サビは大きく」という指導はみんなもう実行している、と講師は言う。サビは音域が高いぶん放っておいても音量は出るし、Aメロは低いぶん自然に抑えられる。それでものっぺりしている単調だと言われるのは、抑揚の正体が音量ではないから。強弱だけで付けようとしても表現には限界がある。
柔らかい声と硬い声を行き来する: 1つ目の答えは声色の使い分け。柔らかい声と硬い声を行ったり来たりするだけで、聴いた印象は大きく動く。マイクを通して歌う場面ほど効くという。強弱は声質を切り替えた結果として副次的に生まれるもので、音量は後から付いてくるくらいの順番がいい、という話の組み立てになっている。
語尾だけ切り替える: 実演では同じ1フレーズを、平坦に歌う版・強弱だけで付けた版・声質を変えた版で並べて聴かせる。歌い手によっては音源では終始柔らかい声のまま、ライブでは語尾だけ硬い声に切り替えている。Aメロならその程度でちょうどいい、動画の実演はわざとやりすぎていると本人が断っている。
口の開け方で揺さぶる: 2つ目は母音、つまり口の開き方。大きく開けるか小さいままかを考えずに歌うと、言葉をなぞるだけの平坦な歌になる。日常会話では感情が高ぶると口の開閉が勝手に変わっているのに、歌うとそれが止まる。誰に届けたいかを思い浮かべて、開け方を決める。
手本はライブ音源で探す: 手本の探し方も具体的だ。同じ歌い手でも音源版とライブ版で違うので、歌いたい曲のライブ映像を探す。どこで声質と口を変えているかを聴き取って、真似てみる。付ける量もAメロから全開にする必要はない。マイルドに少しずつ触るだけで今までとは変わる、と締めている。