読み返し
速さと拾い方
目が戻るのは無駄ではなく、理解の修復作業
どんな技?
戻りたくなったら戻るのを基本にして、目が前の語や行へ向かう動きを止めません。指でなぞって戻りを封じたり、読んだ行を隠して進むやり方は採りません。戻る回数が多い箇所は、そこが自分にとって難しいという印になるので、印を付けた段落を読み直す手を後で足します。戻る動き自体は消す対象ではなく、読み方の手がかりとして扱います。
なぜ効くのか
文の意味は先を読んだ時点で組み直されることがあり、戻る動きはその理解の修復の作業にあたります。読み終えた語を隠して戻れなくすると理解が下がったという結果があり、戻りを無駄な癖と見なす前提とは合いません。一度に頭へ載る量には限りがある(作業記憶)ので、こぼれた分を取りに戻る動きだと考えると自然だと分かります。
やり方
戻る動きは止めず、代わりに戻った箇所へ印を付けます。同じ段落で三度以上戻ったら速さを落とし(速さを切り替える)、主語と述語の対応を一文ずつ確かめます。段落を読み終えたら顔を上げ、十秒ほどで要点を言い直してみて、言えなければその段落へもう一度戻ります。印が多い章は翌日に読み直すぶんとして残し、印の付かなかった章は先へ進みます。
はまりどころ
戻りが多いほどよいという逆の話ではなく、戻る量は難しさの目安でもあります。同じ行で止まり続けるなら文の構造ではなく語彙と背景知識の不足かもしれず、そこは速さの工夫では埋まりません。文字を1語ずつ高速で出す方式は戻れない形ですが、その評価は1語ずつ高速表示で読むに置いてあります。回数を細かく記録するのは読みを止めるので、多かったという感覚で足ります。
確かめられ方
Schotter ら 2014 では、読み終えた語を隠して戻れなくすると理解が下がり、その低下は曖昧な文に限りませんでした。材料は大学生に読ませた単文で、実験1本です。著者はこれを1語ずつ高速表示する読み方への反証として書いており、本を1冊読む場面へ広げた検証はありません。戻りが多い読み手が有利かどうかも、調べられていません。
解説動画(海外・英語): Eye Movements in Skilled Readers/Reading Rockets
目は跳んで進む: 読んでいるときの目は、行の上をなめらかに滑っていくのではありません。素早い跳躍と短い停止をくり返しながら左から右へ進むと説明されます。研究室では、この目の動きを、読んでいる人の頭の中で起きている処理をのぞく手がかりとして使ってきたと語られます。
見える範囲は狭い: 熟練の読者が止まった一点から読み取れるのは、左へ三〜四文字、右へ十五文字ほどの狭い範囲だけだと説明されます。目のつくり自体がそうなっているので、見ている点から離れるほど像はぼやけます。視線の少し外に手をかざすと自分の指の本数さえ数えられない、と自分で試せる確かめ方が紹介されます。
語の上に降りる: 細かい形を見分けるには、視線がその語の上に降りていることが必要です。P と Q、H と J を見分けるには、そこに目を置かなければならないからです。だから速く読める熟練の読者でも、内容を担う語のほとんどには視線を落としていると、目の動きの研究から述べられます。
戻る回数の意味: 読み慣れた読者が後ろへ戻ることは多くありません。そういう人は一つの語に四分の一秒ほど留まり、八〜九文字ぶん先へ跳ぶという進み方をします。いっぽう年齢が低く読み慣れていない読者は、一語ごとに長く留まり、跳ぶ距離が短くなり、戻る回数が増えます。
手がかり探しではない: 動画は戻りが増える理由を、見た語が何であるかを読み取るところで手間がかかっているからだと説明します。読むのが遅い読者も動かし方の型はおとなと同じで、ページの中を当てずっぽうに見回して文脈の手がかりを拾うのではなく、一語ずつ読み取りながら行に沿って進みます。