内なる声
速さと拾い方
頭の中で音になる声は、消すと難しい文で損をする
どんな技?
読んでいるとき頭の中に文の音が浮かぶ現象を、消さずに残して使うという構えです。難しい一文に来たら、声に出さないまま口の形だけで音をたどるか、小さく読み上げて意味を取ります。速さの足かせとして訓練で消すのではなく、詰まったときの手すりとして残しておく扱いです。易しい文では意識せず、難所だけで使う道具として置きます。
なぜ効くのか
内側の発話を抑えた条件でも、易しい材料なら理解は落ちませんが、難しい材料では落ちたという報告があります。文の構造が複雑なとき、音の形で語の順序を一時的に保つ働きが効いていると考えられます。一度に頭へ載る量の話は作業記憶にまとめてあるので、そちらと合わせて読むと筋が見えます。声を消す訓練は、この支えごと外すことになります。
やり方
普通の文では声を気にせず読み、一文が長い箇所だけ意識して音をたどります。読点で区切って主語と述語を対応させ、対応が付かなければ一度だけ小さく読み上げる手を挟みます。人がいる場所では唇を動かさず、読み返しと組み合わせて同じ一文へ戻る形にすれば足ります。音をたどる範囲は段落ではなく一文に留め、全体の速さは変えません。
はまりどころ
声に出せば理解が上がるという別の話ではなく、覚えるために音読する技は声に出すの担当です。抑える訓練を勧めない理由のほうは内なる声を消せば速くなる説に書いてあるので、ここでは繰り返しません。全文を音でたどると速さが大きく落ちるので、詰まった難所だけに絞ります。周りに声が届く場所では、唇の動きも止めるほうが無難です。
確かめられ方
Hardyck と Petrinovich 1970 は筋電のバイオフィードバックで内側の発話を抑えました。易しい材料では理解が落ちず、難しい材料では落ちたという結果です。Slowiaczek と Clifton 1980 の構音抑制の研究も同じ向きで、Rayner ら 2016 の総説がこの2系統をまとめています。ただし土台は1970年と1980年の実験で、材料も読ませ方も限られています。
解説動画(海外・英語): Why Some People Don't Have an Inner Monologue/SciShow
頭の中の声とは: 頭の中で言葉が聞こえるという経験を、一本かけて扱う回です。心理学でいう内言は、音も出さず舌も唇も動かさないまま意味のある言葉を「話す」ことだと定義されます。頭に像を浮かべることや、空腹や光の反射に気づくといった感覚は含みません。言葉を伴う思考だけを指し、多くは声に出したときと同じ抑揚で聞こえます。
読むときの癖: 測るのが難しいので、研究では黙って読ませる、二つの語が韻を踏むかを声に出さずに判断させる、といった課題で外から探ってきたと動画は言います。そこで見えた妙な癖として、読んでいるとき人は一文の語をすべて頭の中で言うのではなく、その一節を代表する一語のほうを言っていることが多い、と紹介されます。
どれくらいの人に: 頻度を質問紙で聞くと多めに出ます。自分の中で起きていることに人は気づきにくいからです。そこで無作為に鳴る呼び出しを持ち歩き、鳴った瞬間に頭にあったものを書き留める方法が使われます。それによると7割から8割5分の人が時おり内なる声を経験し、その多くは時間の15〜30%ほど自分に話しかけていました。
言葉で邪魔される: 働きを確かめる形として、何かをしながら問題を解かせる課題が挙がります。足を叩くような体の作業なら支障が出ないのに、語のリストを覚えながらだと解く成績のほうが落ちます。語が内なる声を邪魔して、自分に言い聞かせながら進めなくなるためだと考えられています(作業記憶)。
消すべきかは未定: 一方で、分かっていないことのほうが多いと動画は繰り返します。どこから来るのか、人によってなぜ違うのか、その違いが何を意味するのか。内なる声を変えられるのか、そもそも変えたいと思うべきなのかも分かっておらず、測り方自体がまだ弱いと結びます(内なる声を消せば速くなる説)。