紙と画面の使い分け
速さと拾い方
説明文を急いで読むときだけ、紙の方が少し有利
どんな技?
同じ内容でも、説明文を時間に追われて読むときだけ紙に回し、物語や下読みは画面のままにします。試験範囲の解説や仕様の文章を締切前に読むなら印刷し、目次で当たりを付ける段階は画面で足ります。差は小さいので、迷うくらいなら手元にある方で読み、印刷の手間を増やしすぎないようにします。紙か画面かは材料と締切で振り分ける判断です。
なぜ効くのか
差が出るのは説明文で、しかも時間に制限のある条件へ偏っています。画面では自分の理解を高く見積もりやすいという報告があり、読み終えたという判断が早く出るためだと考えられています。自分の理解の見立てを指す言葉がメタ認知で、ここが紙のほうが正確だったという点が手がかりになります。読む速さのほうは、どちらでも差が出ていません。
やり方
読む物を、説明文か物語か、締切があるかないかで先に振り分けます。説明文で締切ありなら紙に印刷して読み、それ以外は画面のままで構いません。画面で読むときは章ごとに顔を上げて要点を言い直す手を足し(分かったつもりを検算する)、言えなければ同じ章をもう一度読みます。印刷できない資料は章ごとに区切る形で読みます。
はまりどころ
効果は小さく(g で-0.2前後)、物語だけを扱った研究では差が出ていません。読む速さ自体は紙でも画面でも差が出ていないので、紙にすれば速くなるわけではありません。端末の種類や表示の設定でどう変わるかは分かっていないので、読む目的を決めるの側で材料と締切から振り分けるほうが確かです。紙に写しても、急いで読む癖のほうは残ります。
確かめられ方
Delgado ら 2018 は54研究・約17万人をまとめ、紙が小さく有利(g=-0.21)で、差は説明文と時間制限のある条件に出ると報告しました。Clinton 2019 の29研究でも全体 g=-0.25、説明文 -0.32 に対し物語 -0.04 で、読む速さには差がありませんでした。新しい年の研究でも差は消えず、画面に慣れた世代なら差が無いという説は支持されていません。
解説動画(海外・英語): What does reading on screens do to our brains? | BBC Ideas/BBC Ideas
読むのは後付け: 動画は、読むことほど自然でない行いは無いと切り出します。文字の歴史は人類の時計ではほんの瞬きで、始まりは壺や羊の数を記す程度のものでした。読む力は生まれつき備わらず、一人ひとりが新しく回路を作ります。目の領域と言葉の領域、考えと感情の領域を結び直すことで成り立っている、と説明します。
表面か、深くか: 表面をなぞる読み方では情報を受け取るだけで終わります。深く読むときは大脳皮質をより広く使い、似たものに例えたり、書かれていないことを推し量ったりできると述べます。大事なのは何をどれだけ読んだかではなくどう読んだかで、量が増えるほど拾い読みのほうへ傾く、と警戒します。
入れ物にすぎない: 反対の声も入ります。私たちは本そのものを作品だと思っているが、本は中身を届ける入れ物にすぎない、というのです。はじめから携帯で読まれることを狙った本も生まれ、これまで通り道の狭かった書き手に声を出す場ができたと述べます。どの媒体で受け取ろうと物語は物語だ、という立場です。
画面が落ちる所: そこへ、30を超える国の研究者を集めてデジタル化の影響を調べた結果が置かれます。見つかったのは、画面のほうが落ちるという差でした。短い知らせのたぐいなら携帯でも同じように読めますが、頭にも気持ちにも負荷のかかる中身になると、画面のほうが理解が下がると述べます。読む媒体そのもので差が出る、という報告です。
媒体を選び分ける: 読む回路は作り替えが利くので、使った媒体の性質がそのまま映ると言います。鍛えずにいれば、込み入った中身を理解する力や思い描く力を手放してしまうかもしれない、という懸念も語られます。だから目指すのは二通りの読み方を持つ頭で、読むものに合わせて媒体のほうを選ぶよう自分を律することはできる、と結びます。