自分の読む速さを測る

速さと拾い方

分速何文字かを一度測る。ただし目安の数字は当てにならない

どんな技?

タイマーを1分にして、いつも読んでいる本を普段どおりの速さで読みます。止まった行までの行数に1行の文字数を掛けると、分速の文字数が出ます。同じ本でも節によって差が出るため、何か所か測って幅で見ます。速く読む練習ではなく現在地を知るための作業で、出た値は予定を組む材料に使います。速さそのものを上げる側は拾い読みが扱います。

なぜ効くのか

1冊にかかる時間を、勘ではなく実測した数字から見積もれるようになります。読み終えた直後に自分がどれだけ分かったかを人は当てにくく、メタ認知の精度が低いことは何度も確かめられています。速さの見当も付かないままだと、どこを飛ばすかの判断まで勘に寄ります。ただし測ること自体で速くなるという報告は見つからず、分かるのはいまの現在地だけです。

やり方

1分を計って読み、行数を数えて1行の文字数を掛けて概算します。同じ本の3か所と、難しさの違う資料を2種類ほど測れば、種類ごとの差が見えます。声に出した速さと混ざらないよう、黙って読んだときだけを測ります。数字だけ残すと読み飛ばしに気づけないので、直後に読んだ中身を口で言い直すまでを一組にします。出た値は日付を添えて残します。

はまりどころ

数字を上げること自体が目的になると、読み飛ばしただけで速くなったように見えます。速さは資料の難しさと語彙と背景知識で大きく動くので、本の種類をまたいで比べられません。測った日の体調や場所でも値は動きます。世間で見る「日本人の平均は分速◯字」は出どころをたどれないものが多く、眼を速く動かす速読術を売る側の資料に行き着くこともあります。

確かめられ方

測ること自体で速く読めるようになるかを調べた研究は、探しても見つかりません。基準として引けるのは Rayner ら 2016 が挙げた英語で分速250語前後という値で、日本語の一般成人のデータは限られます。査読された日本語の測定は小田浩一らの MNREAD-J ですが、これは視機能検査用の短文課題で、本を理解しながら読む速さとは別物です。

解説動画(海外・英語): The Science Behind Reading Speed - College Info Geek/Thomas Frank

三つの段で進む: 読む速さを作っているのは三つの段だと整理されます。文字の上を八文字ぶんほど飛ぶ動きに三十ミリ秒、そこで止まって見ている時間が平均で二百二十五ミリ秒(百から五百ミリ秒の幅)、さらに読んだ内容を理解するための間が三百から五百ミリ秒ほど。飛ぶ・止まる・考えるの繰り返しで進みます。

まとまりは四つ: 読むときに使う作業記憶が一度に抱えられるのは、意味でつながったチャンクが四つほどまでだと述べられます。不慣れな題材ではその一つが小さくなり、慣れた題材では大きくなりますが、抱えられる数は変わりません。だから速く読みすぎると理解が抜け落ちます。

足し算では出ない: 三つの段の平均が分かっても、足し合わせて分速は出せないと言います。読み手は語を飛ばしていて、意味を運ぶ内容語には八割五分ほど目を止める一方、文法をつなぐ機能語では三割五分ほど。逆に前へ戻る動きもあり、熟練した読み手でも読む時間の一割五分ほどが読み返しだそうです。

分速の目安: 大学の掲示板には分速九百語や千二百語をうたう速読講座の広告が貼られますが、その多くはでたらめだと言います。眼球運動と読む速さの研究を二十年ぶん見渡した総説では、大学生の読み手のほとんどが分速二百から四百語。四百から五百語を超えた分は理解と引き換えで、それは拾い読みだと切り分けます。

一定では読まない: 速読の助言は同じ速さで読み続ける前提に立ちますが、実際は場面ごとに速さを切り替えることになると言います。話が詰まっている所や不慣れな所では速さを落として意味を保ち、見当のついている所では理解を大きく損なわずに上げられます。今の自分が二百から四百語の幅にいるならそれで普通だ、というのが結論です。