速さを切り替える
速さと拾い方
同じ本の中で、拾い読みと精読を行き来する
どんな技?
一冊を同じ速さで通さず、要点を探す区間は拾い読みの速さで送り、必要な箇所に来たら落として一文ずつ読みます。切り替えの合図に使えるのは、読み返しが増えた、いまの段落を言い直せない、といった自分で気づける手がかりだけです。ページ数や残り時間ではなく中身のほうで速さを決める構えで、区間ごとに速さが違ってよいと考えます。
なぜ効くのか
眼球運動の測定では、読み手がもともと難しい文で遅くなり、易しい文で速くなることが観察されています。難所では意味を組み立てる負荷が上がる(認知負荷)ので、速さが落ちるのは処理の反映だと考えられます。つまり切り替えは習う前から起きている動きで、意識して切り替えることが理解を良くするかは別の話です。そこは比べた研究がありません。
やり方
章ごとに目的へ当たるかを先に見て(読む目的を決める)、当たらない章は拾い読みで送ります。当たる章では速さを落とし、段落の終わりで要点を一言にできるか確かめます。同じ章の中でも、例が並ぶ箇所は送り、定義や条件が出る箇所で落とします。数ページごとに自分の速さを意識へ上げる程度で足り、分速の目標は置きません。
はまりどころ
切り替えを練習させて理解が良くなったかを比べた実験は見当たらず、効き目までは見込めません。速さの目標値を置くと、目標を守るほうが目的になって理解の確認が抜け、わかった気に近づきます。難所を速く抜ける訓練という形にすると眼を速く動かす速読術の話と混ざるので、落とす側の合図として使います。上げる練習の側には、裏づけがありません。
確かめられ方
Rayner ら 2016 の総説では、読み手が文章の難しさに応じて読速を変えていることが眼球運動の測定から示されています。ただしこれは読んでいる様子の観察で、材料は実験室で読ませた文章です。切り替えを意識的に練習させた群と、そうしない群を比べた研究は見つからず、効き目は確かめられていません。上がる速さの幅も分かっていません。