サブリミナル学習
脳の思い込み
気づかない音や映像を流すだけで知識や自信が入るという説
よく言われること
「意識では気づかない小さな音や映像を流しておくだけで、記憶力が上がり自信もついてくる」という説明が、聞き流しの音源や映像の宣伝で使われます。意識を通さないから抵抗なく入る、内容を覚える必要がないといった言い方が添えられます。聞いた人の体験談がそのまま裏づけとして並び、何がどれだけ変わったのかは示されません。
実際はどうか
宣伝どおりに記憶や自尊心が上がるという結果は、ラベルと中身を入れ替えた比較では出ていません。気づかない刺激が直後の反応や選び方をわずかに動かす実験はありますが、それは一瞬の傾きで、知識や技能が入ることとは別の話です。使った人には上達の実感が出るものの、その実感は中身ではなく貼られたラベルのほうに従っていました。
なぜ広まったか
使った人が上達を感じるので、実感が証拠のように扱われる点が広まる力になっています。期待した内容のラベルを見ているだけで良くなった気がすると報告されており、これはわかった気と同じ種類の錯覚です。手間がかからない点も受けやすく、睡眠中に流して覚えると同じ道筋で流通しました。自分では効き目を測れないところも共通しています。
どう言えば正しいか
「気づかない刺激で一瞬の反応は動くが、それで知識が入る裏づけはない」と書けば実験の結果どおりです。効いたという実感は効き目の裏づけにならないので、対照群とランダム化でラベルと中身を分けた比較を見る必要があります。自分で試すなら、思い出す練習のように成績で確かめられる技のほうが向きます。音源そのものが害になるという話でもありません。
確かめられ方
Greenwald ら1991は237人を対象に、ラベルと中身を入れ替えた音源を配りました。1か月使っても記憶も自尊心も宣伝どおりには変わらず、ところが3分の1以上が貼られたラベルに合わせて効いたと感じていました。Pratkanis ら1994はこの期待が実感を作る側を追っています。対象は成人で期間も1か月なので、それより長く使った場合は調べられていません。
解説動画(海外・英語): Do Subliminal Messages Affect Human Behavior?/Dr. Todd Grande
閾下という言い方: 動画はまず言葉の意味を確かめます。閾下とは意識で捉えられる限界より下という意味で、映像でも音でも起こり、画面に一瞬だけ文字を映す出し方が典型だと説明されます。想定されている筋立ては、本人が気づかないまま意識の下で刺激が処理され、行動のほうには表れるというものです。この筋が成り立つのかを、動画はここから順に見ていきます。
気づける音との混同: 取り違えとして挙がるのが、聞こえてはいるが注意が向いていない刺激です。店内の音楽を替えた調査では、ドイツの曲の日は7割を超えてドイツのワインが、フランスの曲の日はフランスのワインが選ばれました。買った客の多くは調査で音楽の影響を否定しましたが、音は耳に届いていたので閾下の例ではないと動画は言います。
一瞬だけ映す: では本当に気づけない提示ではどうか。動画が挙げるのは1000分の3秒ほどで文字を映す出し方です。行動が動いたと報告した研究はあると認めたうえで、効いたとしても変化は小さく、重要な変化と呼べるものではないと述べます。一方で効き目は無いという立場の人も多い、と付け加えられます。
研究の作りが弱い: 効果を報告した研究には留保が並びます。閾下と閾上を混ぜてしまっているもの、標本が小さいもの、手続きや測り方がはっきりしないもの。効果量で見ると小さいか、そもそも見あたりません。動画の結論は「よく分かっていない」で、あるとしても小さな効き目という置き方に留められます。
自己啓発の商品: 最後は商品の話です。閾下メッセージ入りをうたう製品が売られていて、減量・禁煙・痛みの緩和から仕事の成果や自尊心を高めることまで効くと宣伝されています。しかし調べられたかぎりで効き目は見あたらないか、極めて小さい。買わせる用途でも自己啓発の用途でも効いているとは言えない、と動画は結びます。