右脳型・左脳型

脳の思い込み

人は右脳型か左脳型に分かれ得意が決まるという説

よく言われること

「右脳型の人は絵やイメージで、左脳型の人は言葉や理屈で覚えるとよい」という説明が、性格の話や学習法の紹介でよく出てきます。利き手や指の組み方で型を見分けられるとされ、型に合う教材を選べば伸びが変わると案内されます。さらに眠っている右脳を開発すると発想力まで変わるという話が添えられ、型は生まれつきで動かないという前提も一緒に語られます。

実際はどうか

脳の働きに左右差があること自体は実在します。言語の処理は多くの人で左半球に寄り、利き手との関係も知られています。確かめられていないのはその先で、人が右脳型と左脳型に分かれるという所見は脳画像から出ていません。型に合わせた教え方で伸びるという比較結果も示されていません。左右差は集団として見たときの傾きで、一人ひとりを二つに割る線ではありません。

なぜ広まったか

左右で役割が違うという話は一枚の絵で説明が終わるので、覚えやすく人にも伝えやすくなっています。得意不得意の実感に当てはめやすく、絵が得意だから右脳型と読めば自分の説明がつきます。型に当てはめると話が早いところは血液型で学び方が決まる説と同じです。学習スタイルに合わせるが教え方の一致を言うのに対し、こちらは脳の構造で得意が決まると言い切る点が違います。

どう言えば正しいか

「部位ごとに左右差はあるが、人を右脳型と左脳型に分ける根拠はない」と言えば所見の通りです。得意不得意は経験と練習量の差として扱えるので、型を先に決めないまま進められます。絵で覚えるほうが合うと感じるなら、絵と言葉を組み合わせるのように材料の側で選ぶと、効いたかどうかを後から確かめられます。利き手と左右差の関係は事実ですが、そこから学び方までは決まりません。

確かめられ方

Nielsen ら2013は7〜29歳1011人の安静時の脳画像を調べ、部位ごとの左右差はあっても片側優位の型に分かれる人はいなかったと報告しています。見ているのは安静時の脳の活動で、教え方を変えて成績を比べた研究ではありません。Dekker ら2012では、この説が教員の間に広く残っていることが示されました。言い直しは追いついていない状態です。

解説動画(海外・英語): Neurologists Debunk 11 Brain Myths | Debunked | Science Insider/Insider Science

神経内科医が検討: 米国の医学部に所属する神経内科医2人が、脳をめぐる11の思い込み(脳は10%しか使っていない、脳が大きいほど賢い、ほか)を1つずつ検討していく回です。「論理的な人は左脳型、創造的な人は右脳型」という説もその一つとして取り上げられ、そういう構造の違いは無いと否定されます。

説の出どころ: もとは1800年代で、脳の働きを部位ごとに割り振ろうとしていた当時の神経学者が、多くの人で言語と言葉の記憶が左側に偏ること、視空間の働きは右側が担うことを見つけたところから始まった、と2人は説明します。左右差そのものは実在するという話です。

優位半球の意味: 神経内科で「半球の優位」と言うときに指しているのは、言語と言葉の記憶がどちら側にあるかだけです。右利きの人ではおよそ9割が左半球優位で、話す・聞いて分かるといった働きが左に乗ります。左利きの人はどちらにもなり得る、というのが2人の説明です。

得意は育ちの側: では論理的な人と創造的な人で脳の構造が違うのか。2人は違いは無いと答え、差を作るのは育った環境や関わり方の側だと言います。「左脳型」「右脳型」という言い方は、その人がもともと持っている才能や身につけた技を指しているだけで、よく使う側の脳とは関係がないという結びです。

一粒の真実: 締めでは、こうした思い込みにはたいてい一粒の真実が混じっているが、そのままでは正しくないと言われます。左右で担う働きに偏りがあることと、人を右脳型・左脳型に分けて得意を決めることは別だ、という線引きがこの回の要点です。自分で出どころを確かめてほしい、という言葉で終わります。