ブドウ糖やサプリで頭が良くなる説
脳の思い込み
甘いものやサプリで記憶と集中が上がるという説
よく言われること
「甘いものを口に入れると脳に燃料が届いて記憶と集中が上がる」「記憶に効く成分のサプリを飲めば頭の回転が速くなる」という言い方です。試験の前にブドウ糖の菓子を配る場面や、店頭で頭に良い栄養としてサプリが並ぶ場面で見かけます。「脳の燃料はブドウ糖だから」という理由づけがたいてい添えられ、足せば働きも上向くという形で語られます。
実際はどうか
二つを分けて考える必要があります。食べていない燃料が足りない状態から普通に戻って成績も戻ることと、すでに普通に食べている人がそこからさらに上がることとは別の話です。後者の裏づけは弱く、脳の活動の変化を報告する研究は多い一方で、認知の成績が有意に上がったという報告は一部にとどまります。健康な人へのイチョウ葉エキスは効き目が出ていません。
なぜ広まったか
「脳の燃料はブドウ糖」という説明は一行で筋が通るので伝わりやすいです。空腹で頭が回らない体験は多くの人が持っていて、甘いものを口にすると落ち着く感じがあるため体感と合ってしまいます。脳の話を数字ひとつで語る点は脳は10%しか使っていないと似ていて、効いたという話だけが残って積み上がります。効かなかったという地味な報告は、そもそも目に入りません。
どう言えば正しいか
「欠食していれば食べたほうが良い」までが確かめられている範囲で、「普通に食べている人がそこからさらに上がるとは確かめられていません」と続けるところまでが裏づけの範囲です。成分ごとに事情が違うので、調べられていないものを効くとも効かないとも書かないのが安全です。食事の整え方は朝食をとるかで扱い、糖尿病などの治療は専門家に相談する範囲です。
確かめられ方
Peters ら2020年の系統的レビューは、ブドウ糖と認知を扱った脳画像の研究を集め、脳活動の変化を報告する研究は多い一方で、認知成績の有意な改善を報告したのは一部にとどまると整理しています。集まっているのは健康な人に短時間の課題をさせた研究が中心です。イチョウ葉エキスは Laws ら2012年のメタ分析で認知を高めないと報告されており、他の成分は別に調べる必要があります。
解説動画(海外・英語): Why Lions Mane Supplements Are A WASTE Of Money!/Dr Brad Stanfield
細胞と動物では有望: 動画はまず、あるきのこの粉末が神経の成長を促す物質を増やすという細胞の実験から入ります。神経を傷つけたマウスに与えると再生が進んだという報告があり、新しいものを探る行動や活動量が増えたという結果も紹介されます。ただし細胞や動物で見えたことと、人が飲んで効くかどうかはまったく別の話だと釘を刺して人の試験へ移ります。
偽薬の側も伸びた: 軽い認知の衰えがある30人を二群に分け、片方に本物、片方に偽薬を渡した試験では、飲んだ側の点数が上がりました。ところが論文の中を開くと偽薬の側も点数が上がっています。同じ検査を繰り返せば答えを覚えて点が伸びるためで、動画はこれを慣れによる上昇と読み解き、対照群とランダム化を置いた小さな試験では本物の効き目と見分けがつかないと述べます。
差はごくわずか: 12週間の試験では三種類の検査のうち一つにしか差が出ませんでした。動画は診療で使う検査だとしたうえで、30点満点の29と30の違いは治療方針を変えないと述べます。49週間の長い試験でも偽薬の群との間に統計上の差は無かったと指摘し、効果量の小ささを一本ずつ確かめていきます。
結論だけ読むと: 動画が繰り返すのは、要旨と結論だけを読むと見誤るという点です。たくさんの指標を測ればどれか一つは差が出ることがあり、著者はその一つを結論に書きます。差が出なかった残りは触れられないままなので、本文まで開いてどこから結論を引いたのかを自分で確かめる必要がある、というのが動画の姿勢です。
分からないと言う: 最後に動画は、裏づけが無いことは効かないことの証明ではないと断ります。安全そうだが効くかは分からない、だから自分は飲まない、という結び方です。きのこ全体では、食べる量とがんの少なさが結びつくという観察研究のメタ分析を挙げつつ確かな証拠ではないと釘を刺し、心臓や糖尿病の指標では関連が無いと整理して、食事と運動と人との関わりを勧めて終わります。