睡眠中に流して覚える
脳の思い込み
眠っている間に音声を流せば新しく覚えられるという説
よく言われること
「眠っている間に音声を流しておけば、寝ている時間で単語や外国語が入る」という説明が、聞き流しの学習法として繰り返し紹介されます。寝ている数時間をそのまま勉強にあてられるという形で語られ、起きている努力がいらないところが売りになります。枕元で流すだけでよい手軽さも一緒に語られ、外国語の暗記で持ち出されることが多い説です。
実際はどうか
眠っている間に新しい知識が入るという主張は支持されていません。脳波で睡眠を確かめると流した内容は思い出せず、覚えていた人は途中で目が覚めていたと報告されています。一方で起きているうちに覚えたものを匂いや音の手がかりで呼び戻す実験はあり、こちらは定着の助けを調べている段階です。入力と定着は別の話で、支持されていないのは入力の側です。
なぜ広まったか
睡眠が記憶の定着に要ることは眠って記憶を固めるで分かっているため、寝ている間に入力までできるという飛躍がつながりやすくなっています。半分目が覚めた状態で聞いた断片を朝に思い出せば、寝ながら覚えた実感になります。努力のいらない学習という筋は売り物にしやすく、聞き流しの形で長く残りました。眠っていた本人の側からは確かめにくい話でもあります。
どう言えば正しいか
「睡眠は覚えたものを固めるが、寝ている間に新しく覚えることはできない」と言えば分かっている範囲に収まります。手を入れられるのは寝る前の並べ方と睡眠そのもので、寝る前に覚えるや睡眠時間を削らないのほうが手がかりになります。手がかり音の実験は実験室の手続きで、自宅の手順として真似する段階ではありません。眠れない日が続くなら医療機関に相談する範囲です。
確かめられ方
Simon と Emmons 1955は睡眠学習の研究を洗い出し、確かめられていないと結論しています。続く1956年の実験では脳波で睡眠を確認したうえで流した内容を想起できず、覚えていたのは流している間に目が覚めていた人でした。Rasch ら2007以降の手がかりによる再活性化は起きて覚えたものが対象で、新しい内容の学習は調べられていません。
解説動画(海外・英語): Can you learn in your sleep?/Benjamin Keep, PhD, JD
眠りは文脈を外す: 動画は、覚えたことはその場の景色や音や匂いと一緒に結びつくので、同じ場に戻れば出しやすく、離れると出しにくくなると説明します。起きたまま過ごした人は同じ部屋なら思い出せても別の部屋では落ちました。眠った人の強みは、その別の部屋のほうではっきり出て、場所の縛りが外れる形でした。
筋のほうを拾う: 深い眠りは寝入ってすぐに訪れ、そこで海馬にいったん置かれた記憶が前の側の皮質へ移り、抽象のほうへ均されていくと説明されます。「夜・暗い・冷たい」のように並ぶ語を覚えると、眠った側は見せていない共通の語まで思い出しました。取り違えに見えて、奥の筋を探している形だと動画は言います。
長さで差がつく: 同じ内容を覚えた後に1時間眠った人と、15分だけ眠って残りは起きていた人を比べると、直後の出来は変わらないのに時間がたつほど差が開きます。指で並びを打つ練習や、詰まっていた課題が解けるかどうかにも眠った側の利があり、覚える中身に限った話ではないと述べます。
新しくは入らない: そのうえで動画は、眠っている間に新しい情報を覚えることはできないと述べます。手を入れられるのは進んでいる定着のほうで、覚えるときに嗅いだ匂いを深い眠りの間にもう一度嗅がせるやり方を挙げます。音や語でも起きるが眠りを乱しにくいのは匂いで、深い眠りに合わせないと同じようにいかないとも言います。
眠る側に戻す: 最後は睡眠時間を削らない話に移ります。先に走りや投げの精度を測っておいた選手たちに眠る時間を増やしてもらうと、測った項目のほとんどが上向き、気分の訴えも軽くなりました。動画は凝った勉強法や脳トレより眠ると締め、眠りは覚えたものが固まる時間だという線を残します。