分けて練習と通しで練習

体で覚える

通しでやるか部分に切るかを、技の性質で決める

どんな技?

一つの技を部分に切って回すか、頭から終わりまで通すかを、先に決めます。切るときは動きの区切りで切り、その部分だけを数回まわしてから通しに戻します。発表のリハーサルなら一節ずつ、操作の手順なら画面ごとが部分にあたります。流れが途切れると別物になる動きでは、切った時点で練習している中身がすり替わります。どちらが上という話ではなく、技の性質で選び分ける技法です。

なぜ効くのか

部分に切ると一度に扱う量が減るので、認知負荷の重い技でも手が回ります。ところが部分と部分のつなぎ目そのものが中身である技では、つなぎ目は通しでしか練習できません。ここからつながりの弱い技は分割、強い技は通しという仮説が立てられ、メタ分析の平均もおおむねその向きに並びました。効くしくみが二つあって、技によって逆を向くという構図です。

やり方

まず技を紙に書き出して、区切りの候補に線を入れます。その区切りが単独でも意味を持つなら分割、前後の勢いを受け継ぐなら通しにします。分割では一区切りを数分まわし、最後は通しで締めます。通しで詰まる箇所が出たら、そこだけを2、3回取り出して戻ります。切る箇所は一度に一つまでにし、通しが安定してきたら条件を変えて練習するへ進みます。

はまりどころ

確かめられているのは体を使う課題ばかりで、用語や年号の暗記にこの切り分けを持ち込む根拠はありません。覚える側は思い出す練習の担当です。細かく切りすぎるとつなぎ目が一度も練習されないまま本番を迎えます。向きが見えているのは平均の話で、比べた研究の数が足りていません。選び方で大差が出ない場面もあるので、切るか通すかの検討に時間をかけすぎないようにします。

確かめられ方

Fontana らが2009年に行ったメタ分析は、分割と通しを比べた44論文を集め、効果量を出せたのは20論文でした。平均としてはつながりが弱く複雑な技は分割が有利という1963年の仮説の向きに沿い、材料は体を使う運動課題です。ただし著者自身が研究数が足りず検証は不十分だと書き添えていて、技ごとにどちらが向くかを言い当てる段階には進んでいません。

解説動画(海外・英語): Whole and Part Practice in Motor Control and Learning/Dr. Veronica Foster

通しか部分か: 動画は、いくつもの部品が決まった順に並ぶ技を前に、丸ごと通して練習するのか、部分に切って練習するのかという問いから始めます。テニスのサーブは要素ごとに分けて覚えるのか、ピアノは片手ずつから入るのか最初から両手で弾くのか。答えは技しだいだと述べ、判断のためのものさしを二つ立てるところから講義が進みます。

複雑さと組織化: 一つ目は複雑さで、部品の数と、こなすのに要る注意の量(認知負荷)を見ます。矢を射る動作は難しくても部品は少ないので、難しさと複雑さは別物だと念を押します。二つ目は組織化で、部品どうしが時間と位置で頼り合う強さを指します。前の部品の出来に次が左右されるほど、組織化は高くなります。

どちらを選ぶか: バスケットのジャンプシュートは組織化が高く、跳ばずに撃つ部分だけを抜き出すと腕とボールの向きが本番と変わってしまいます。動画はここから、部品が少なく頼り合いの強いダーツやボタン留めは通しで、部品が多く頼り合いの弱い床運動やタイヤ交換は部分に切ってよい、と二つのものさしの組み合わせで並べていきます。

部分の切り方: 多くの技は中間にあるので、頼り合う部品だけをひとかたまりにまとめ、残りは別々に回します。部分の切り方は三つで、左右の手のように部位ごとに分ける形では難しいほうの手から始めます。一つ練習しては次を足していく形は最後に通しへ着き、三つ目は道具をやさしくする、速さを落とすといった難度を下げる形です。

通しのまま狙う: 頼り合いが強くて通しでいく技も、ただ頭から流すだけにはしないと言います。通しながら直したい部分へ注意を向けると、通しの中に部分練習に近い場ができて、何も指定しない通しより得られるものが増えると述べて講義を閉じます。切るか通すかは優劣ではなく、部品の数と結びつきの強さで決まる——この項目の立て方と同じです。