動作をつけて覚える
体で覚える
言葉で覚えず、その場で実際に体を動かしてみる
どんな技?
言葉で唱える代わりに、その場で実際に体を動かします。「鍵を回す」なら手首をひねり、「箱を持ち上げる」なら腕を上げます。物が無くても動きのまねで足ります。手順書や機械の操作を覚えるときは、読んだ一行ごとに指と手で通します。声に出すと重ねてもかまいません。その場合は動きを先に通し、言葉は後から乗せる順にします。
なぜ効くのか
動きを作るには、言葉の意味を体の動かし方に翻訳する必要があります。その一手間で、言葉だけの記憶に運動の手がかりが加わると見られています。手順や操作の学びは手続き記憶と宣言的記憶のうち前者に寄るので、動かして覚える形と相性が良いという読み替えもされます。ただし何が効いているのかは決着していません。動作の計画なのか目立ちなのかで分かれています。
やり方
覚える対象を5〜10の動作に割り、一つずつ体で通します。全部に動きを付けると比べる相手が消えるので、覚えにくい箇所だけに絞ります。1周3分ほどで回し、翌日は動きを先に思い出して言葉を足します。人前でできない場面では頭の中でやってみるに替えます。物が無い場所でも同じ手順で回せるので、道具はそろえなくてかまいません。
はまりどころ
確かめられている材料は「鍵を回す」のような動作句で、年号や用語の暗記に同じだけ効くとは書けません。手順や実技へ読み替えるのは自然ですが、知識の記憶へ広げるのは飛躍です。覚える項目の全部に動きを付けると差は出にくくなり、動作を考える時間だけが増えます。動きは出るのに理由が抜けることもあり、そこはなぜと問うで埋めます。
確かめられ方
Roberts・MacLeod・Fernandes 2022 は、行動研究145件のメタ分析で平均g=1.23という大きさを報告しています。材料は「鍵を回す」のような動作句が中心で、大きさは実験の組み方と比較相手で変わりました。テスト形式や保持期間、物の有無では変わらず、Steffens ら 2015 は全部やる群と全部見る群に分ける設計だと自由再生で差が出にくいと整理しています。
解説動画(海外・英語): Teacher Toolkit: Total Physical Response/ESC Region 13
体で意味を示す: 動画は、語彙を教える手として体を使う形を挙げます。言葉を体の動きに直すには、意味のほうを抽象的にとらえ直すことが要る。その一手間が、覚えた中身を固めていくと述べます。新しい語をつかみにくい英語を学ぶ生徒にはとくに強い手だと位置づけ、教える側の道具として紹介します。
定義から始める: 手順の初めに置くのはその子に分かる短い定義で、動画はここから始めるのがいつも大事だと述べます。動きを先に渡すのではなく、まず定義を読み合わせる。そのうえで、この意味を体でどう見せるかを本人たちに考えさせる、という順です。言葉の中身が先に決まってから、体のほうが動きます。
動きは自分で作る: きれいにする、という意味なら体でどう表せるか——と教える側が問いかけ、やってみた子にはみんなに見せてもらいます。動きは本人たちが作るもので、決まった正解の動きは渡しません。自分たちで作った動きなら本人の持ち物になるぶん、その形で覚えていやすいと動画は言います。
言葉と動きを同時に: 覚える段はゲームの形にします。名指しで語を投げ、当てられた側は定義を声に出しながら、同時に動きも通します。口のほうは声に出すと重なり、そこへ動きが乗る形です。返すのは語ではなく定義と動きで、片方だけでは通りません。この形を崩さずに続けた組では、1年で60〜70語まで届くこともあると述べます。
一年で残るもの: 1年の終わりには生徒どうしで出し合うようになっていた、と動画は振り返ります。もとをたどれば自分たちで作った定義と動きに行き着き、全部が本人のものになっている。動かして覚える形の芯はそこにあり、手ごたえの大きいやり方だと結びます。