手で書き写す
体で覚える
ノートを打ち込む代わりに、手で書いて残す
どんな技?
講義や動画のメモを、打ち込む代わりに手で書いて残します。書ける速さには限りがあるため、聞いた言葉をそのまま追えず短く言い換えて書く形になりやすいところが違いです。ただし手書きと打ち込みのどちらが後で残るかは決まっていません。選ぶ基準になるのは後で読み返して使えるかのほうで、書く道具の種類そのものは問いません。
なぜ効くのか
手で書くと速さの上限から要約が入り、その一手間が認知負荷の掛け方を変えるという説明がされてきました。打ち込みは速く打てる分だけ、聞いた言葉をそのまま写しやすいという筋です。ただしこの説明は追試で支持されていません。写す行為そのものより別の処理を足す形のほうが差は出ています。足すなら描いて覚えるや声に出すの側です。
やり方
どちらで取るかより先に、後で思い出す作業を挟むかを決めます。手で取るなら聞いた言葉を写さず、自分の言葉に置き換えて書きます。1コマ終わりに5分ほどで余白へ問いを書き足し、翌日に答えを見ずに言い直します。打ち込みでも手順は同じで、思い出す作業が入っているなら形はどちらでも構いません。速さより後で使えるかで選びます。
はまりどころ
手書きなら残るという言い方は、追試の結果とかみ合いません。写すこと自体は読み返しに近く、量を増やしても記憶は伸びにくいです。整える方向へ寄せるとノートを美しく作ると同じ落とし穴に入ります。打ち込みが浅いという逆向きの決めつけも、同じだけ根拠が弱い状態です。本を読みながらのメモの取り方は読む技の側が扱い、ここでは手書きと打ち込みの比べ方までにとどめます。
確かめられ方
Mueller と Oppenheimer 2014 が手書きの優位を報告し、2018年に訂正記事が出ています。Morehead・Dunlosky・Rawson 2019 の追試と拡張では群の間の差が一貫せず、手書きの優位は再現しませんでした。対象はどちらも講義を聞く場面の学生で、いまは再現性の問題として扱われている状態です。
解説動画(海外・英語): Taking notes: use a laptop or handwrite?/Presenting Psychology
打つほうが速い: 動画は、講義のメモを手で書く形と打ち込む形を比べた研究をたどります。出発点の見立ては、多くの学生は書くより速く打てるので、打ち込みだと聞いた言葉をそのまま写しやすいのではないかというものでした。実験では学生を無作為に二つへ割り振り、15分の講演を見ながら普段どおりメモを取らせ、30分別の作業を挟んでから中身を問うテストをしています。
写した分だけ弱い: 打ち込んだ側のノートは量が多い一方でそのまま写した部分も多く、概念を問う設問の成績は手で書いた側を下回りました。動画は次に、写さないよう先に注意しておいた群を作った実験を紹介します。ところが注意を受けても、写す量も成績も意味のある差は出ず、写す癖は言葉で言い聞かせるだけでは動かなかったと整理します。
七日おいて試す: さらに講演から7日おいてテストし、直前に10分ノートを見直せるかどうかでも分けた実験が続きます。見直せた打ち込み側では、そのまま写した分量が多い人ほど成績が低いという向きが出ました。手書きで見直せた群が他を上回り、写した部分も少なかったと動画は伝えます。量を多く書けば見直しで活きるという見立ては、支持されませんでした。
追試では差が小さい: 動画は、この結果が広く紹介された一方で、一つの研究だけで手書きが良いと決めるのは早いという指摘が出て、2019年に追試が行われたと続けます。追試でも手書き側がやや上でしたが、差は小さく統計的に意味のある大きさではなく、どちらを使えと勧める土台にはならないと整理されました。
道具でなく取り方: 食い違いの理由として動画が挙げるのは、ノートの取り方そのものが実験でそろえられていない点です。要約の仕方ひとつで後の記憶は変わるので、ペンかキーボードかよりどう取るかのほうが効くと言います。勧めるのは、そのまま写さずなぜと問う形で自分の言葉に直すことだと結びます。