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題名・作者・気づきの書き方。

記録は、見た枚数を増やすために残すのではなく、あとで思い出せるようにするために残す。米国の大学の研究者が、参加者に美術館を回らせ、一部の作品を撮影させ、残りは見るだけにした実験がある。作品の全体を撮ったときは、見るだけのときより、作品そのもの・細部・置かれていた場所の思い出し方が悪くなった。一部分に寄って撮ったときは悪くならず、寄らなかった細部も同じように覚えていた(Henkel 2014)。写真は撮ってよいが、撮った枚数は記録にならない。

その場で写すのは、題名と作者と、壁のラベルに並んでいる語だ。南オーストラリア州立美術館の教育用の案内は、ラベルに作者名・言語集団・制作された場所・作者の生年・素材・寸法・入手の経緯が並ぶと説明する。素材と寸法まで写しておくと、家に帰ってから同じ作品を探し直せる。作者名と題名は、原語の表記も一緒に写す。

気づきは、見えたことと考えたことを行で分けて書く。前の行には、画面に描かれている物(モチーフ)を名指しし、どこに置かれているかを添える。後の行には、配置をどう読んだかを書く。髑髏や鏡のような寓意の読みは「〜と読まれる」で止め、館の説明と自分の推測を混ぜない。1枚に3行で足りる。

モチーフ
モチーフ写真: Paul Cézanne / Public domain
寓意
寓意写真: Pieter Claesz / Public domain

自分で描いた絵と撮った写真には、日付・時刻・場所・天気を書き添える。英国のコンスタブルは、1819年から家族でハンプステッドに滞在し、1821年と1822年の夏と秋に、ヒースから雲を見続けた。空の習作の多くに天気・日付・正確な時刻が書き込まれ、日記のページのように読めるという(テート美術館の記事)。写真なら時刻は自動で残るが、天気と光の向きは残らない。同じ場所へ通って連作にするなら、1枚ごとに天気と光の向きを1行書く。

習作
習作写真: Georges Seurat / Public domain
連作
連作写真: Claude Monet / Public domain

文字で書くより、小さく描いたほうが残ることもある。語を描いた場合と書き写した場合を比べた7つの実験では、描いたほうが自由に思い出せた数が多く、覚える時間や語の数を変えても差の向きは変わらなかった(Wammes ら 2016)。描いた語と書いた語を混ぜた3つの実験でも、描いた語はよく思い出され、同じ並びの書いた語は逆に損をした(Huff ら 2024)。ラベルを写すだけで終えず、画面の骨組みを余白に収まる小さな図に落とす。

初めての人がつまずく所は3つある。1つ目は、説明文を写して終えること。自分の言葉が1行も無いと、読み返しても見た日の気づきが戻らない。2つ目は、撮った写真を見返さないまま次の館へ行くこと。3つ目は、題名と作者を写さずに帰ること。画像だけでは、同じ主題の別の作品と区別がつかなくなる。

題名と作者を写す、見えたことと考えたことを分けて書く、日付と天気を書き添える。この3つを1枚につき1分で済ませると、次に同じ作品の前に立ったとき、前回の見落としから続けられる。

出典

  1. 論文・英語 Linda A. Henkel(2014) Point-and-shoot memories: the influence of taking photos on memory for a museum tour
  2. 論文・英語 Jeffrey D. Wammes, Melissa E. Meade, Myra A. Fernandes(2016) The drawing effect: Evidence for reliable and robust memory benefits in free recall
  3. 論文・英語 Mark J. Huff, Joshua M. Namias, Pauline Poe(2024) The drawing effect: Evidence for costs and benefits using pure and mixed lists
  4. 公的機関・英語 Tate Etc.(Tate)(2025) Under the Same Sky: John Constable
  5. 公的機関・英語 Art Gallery of South Australia How to read a wall label