マダニ

危険生物(虫)

マダニは、草むらで服に取りつく吸血性のダニ。

見分け方

吸血前は3〜8mmほどで、血を吸うと10〜20mmに膨らみます。春から秋(3〜11月)に活発で、シカやイノシシが出る草地や林の縁の葉先で待ちます。人に付くと食いついたまま、長いと10日以上吸血します。ヤマレコの社長は、咬まれても感覚がなく気づけないと解説しています。広島・岡山・香川で咬まれて受診した181人から採った191匹の調査では、79.6%がタカサゴキララマダニで、咬まれた時期は4〜7月に多くなりました。

危険・注意

怖いのは吸血そのものより病気です。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は国内で2013年3月〜2025年4月末に1,071例が届け出られ、致死率は10〜30%、60歳以上が90%を占めます。咬まれて6〜14日後に発熱や消化器症状が出て、重症では出血や意識障害を伴います。日本紅斑熱は2〜8日後に発熱・発疹・刺し口が出て、2017年に337例と最多でした(1999〜2019年の集計)。

出会ったら

食いついたマダニは無理に引き抜かず、皮膚科などで取ってもらいます。口器が皮膚に残り化膿することがあるためです。その後数週間は体調の変化に注意します。予防は長袖長ズボンで裾を靴下に入れ、明るい色の服で付いたマダニを見つけやすくします。ディートやイカリジンの忌避剤も完全には防げず、おーちゃんねるの自宅実験では、薬剤を染みこませた紙にしがみつく個体もいました。帰宅後は入浴時に髪の中・脇・膝の裏まで全身を確認します。

出典

  1. 公的機関 国立感染症研究所(国立健康危機管理研究機構)(2025) マダニ対策、今できること
  2. 公的機関 愛媛県(2026) ダニ媒介感染症(SFTSなど)について
  3. 公的機関 広島県感染症・疾病管理センター(2026) 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に注意しましょう
  4. 公的機関 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト(IASR 46巻5号)(2025) <特集>重症熱性血小板減少症候群(SFTS) 2025年5月現在
  5. 公的機関 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
  6. 公的機関 国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所)感染症情報提供サイト(2020) IASR 41(8), 2020【特集】日本紅斑熱 1999~2019年
  7. 公的機関・英語 米国 CDC(疾病対策予防センター)(2024) Preventing Tick Bites
  8. 論文・英語 福島真之介ほか(Ticks and Tick-borne Diseases)(2026) Epidemiological and molecular characteristics of human-biting ticks in areas endemic to Japanese spotted fever: a prospective study
  9. 動画 ヤマレコ社長の絶対遭難させないチャンネル 【運が悪いと命を落とす!?】マダニの危険性と対策について解説!
  10. 動画 おーちゃんねる 虫よけスプレーは本当にマダニに効くのか?

解説動画: マダニに噛まれたときの外し方と、やってはいけない取り方/おのっちパパチャンネル【尾野整体院】

概要: 狩猟で何度もマダニに噛まれている投稿者が、皮膚科がすぐ受診できないときのセルフケアを実演する。マダニは脇、腹、膝の裏など皮膚のやわらかい場所に食いつきやすく、犬や猫にも付く。見つけたら24時間以内に外すのが最善で、それを過ぎるとマダニの唾液に含まれるセメントのように固まる成分が硬化してしまい、引いても外れなくなると説明している。腹がふっくら膨らんだ個体はすでに取りにくい状態にあたる。

ピンセットで引き抜くのは厳禁: マダニの腹をつまんで無理に引き抜く行為は絶対に避ける。腹を圧迫すると吸われた血が体内へ押し戻され、マダニが持つウイルスや細菌をもらいやすくなる。さらにマダニの口はノコギリ状にギザギザで、まっすぐ引っ張っても突起が皮膚に引っかかって抜けず、胴だけがちぎれて口が残ってしまう。口が残った場合は皮膚科でその部分の皮膚を切開してもらうことになると述べている。

塩とマダニキャッチャーで外す手順: ペットボトルの蓋に塩をたっぷり詰め、上から水を吹きかけて湿らせ、噛まれている部分に押し当てて絆創膏やテープで留める。5〜10分置いて外すと、たいていマダニは死んでいる。そこへ薬局やネットで千円前後で買えるマダニキャッチャーを口元に差し込み、引き抜かずにくるくる回転させながら外す。ピンセットしかない場合も、口元を軽く押さえて同じように回して取る。この手順なら9割以上外せると話している。

帰宅後の全身チェック: 長袖長ズボンでもわずかな隙間から入り込むため、完全に防ぐことはできない。山でのキャンプ、狩猟、庭の草むしりのあとは入浴前に全身をボディチェックするのがよく、背中など自分で見えない場所は家族に見てもらう。皮膚のやわらかい股間なども付きやすい。健康な大人は症状が出にくい一方、基礎疾患のある人や高齢者、免疫の弱い子どもは腹痛や発熱、嘔吐を起こすことがあると注意している。

解説動画(海外・英語): 5 Common Tick Myths Debunked: How to Stay Protected from Ticks/Insect Shield Repellent Technology

この動画について: ロードアイランド大学のTom Mather博士(通称The Tick Guy)が、マダニについてよくある思い込みを5つ挙げて正す回。アメリカのマダニ(クロアシマダニ、アメリカイヌマダニ)とライム病・ロッキー山紅斑熱を前提にした話なので、日本のマダニ・ツツガムシや日本紅斑熱・SFTSにそのまま当てはまるわけではない。ただしマダニがどう人に付くのか、忌避剤が効く仕組みは共通なので、その部分は日本でも役に立つ。

誤解1:マダニは木の上から降ってこない: 頭に何か落ちてきた経験から「木から降ってくる」と思われがちだが、マダニがわざわざ木に登って宿主を狙うことはない。そもそも目が無いので、落下して当てるという戦略が成立しない。実際には狙う動物の背丈に合わせた高さの草や枝先で待っている。アライグマ狙いならその体高、シカ狙いならもう少し高く——足元で待っていてはシカの4本の脚を外してしまうから。頭に落ちてきたものをよく見れば、たいていは木の上で暮らすゾウムシやアブラムシで、風で落ちてきただけ。

誤解2:どのマダニも病原体を持っている: そんなことはない。病原体を持つのは前の発育段階で、感染していてなおかつダニへ移せる動物から吸血した個体だけ。幼虫は無菌で孵化し、感染したネズミやシマリスから吸血すると病原体を拾い、若虫になったときに運ぶ側になる。感染した動物から吸っても必ず感染するわけでもない。種類による差も大きく、北東部・中部大西洋岸のクロアシマダニの成虫は約50%がライム病の病原体を持つのに対し、ロッキー山紅斑熱を運ぶアメリカイヌマダニで感染量を持つのは1%未満。つまり噛まれたダニの種類によって、リスクの大きさがまるで違う。

誤解3:頭まで皮膚に潜り込んでいる/誤解4:赤い輪はすぐ出る: 深く潜っているように見えても、体内に刺さっているのは口下片(hypostome)という頭の先の短い部分だけで、それ以上は進めない。皮膚が炎症で盛り上がって包み込んで見えることはあるが稀で、脚が数本だけ見えている状態は、たいてい自分で掻いてダニの胴体をちぎってしまい、頭だけが残っている状態。もう一つ、噛まれた場所が赤いのを「ライム病の輪」だと早合点しやすい。特徴的な標的状の発疹は吸血が終わってから4〜6日ほどして出るもので、ダニが付いたままの段階で見える赤みは噛まれたことへのアレルギー反応であることが多く、たいてい引く。数日後に赤みが広がってくるなら医療機関へ。ダニが付いている下の赤みが1〜2日で目に見えて広がるようなら、すぐに受診する。

誤解5:DEETを塗っておけばマダニも防げる: ここが最も実用的な指摘。DEETは蚊やブユにはよく効くが、マダニに対しては効きが落ちる。理由は2つ。DEETは肌の上を歩いたダニに「熱い床」のような不快感を与えるだけで、落ちるとは限らないこと、そして液体のあいだは働くが、揮発しはじめると蚊に対してよりマダニに対しての効果が先に落ちること。そもそもマダニと蚊では宿主の見つけ方が違うので、蚊の探索を撹乱するために作られた薬剤が同じように効くと考える理由がない。マダニに対していちばん効くのは、衣類に染み込ませたペルメトリン。効果が長持ちし、一日どころか週末や一週間の行動でも衣類に載ったダニから守れる。肌にはDEETを併用してもよいが、ダニ目的なら頻繁に塗り直さないと意味がない。