三手先
軒を出す部材
時代: 飛鳥・奈良
肘木と斗を前へ三段重ね、軒を大きく前へ出す組物です。塔や金堂のような格式の高い建物に使われ、下から見上げると段が三つ数えられます。
何をしている部材か
肘木と斗を前へ段々に重ね、軒桁を壁の面から大きく離して受ける組物です。段が増えるほど軒の出を長く取れ、深い軒と大きな屋根が成り立ちます。奈良県の薬師寺東塔や興福寺五重塔、京都府の醍醐寺五重塔のような五重塔と金堂に使われ、格式の高い建物に選ばれる形として整理されてきました。段のあいだには尾垂木が斜めに差し込まれ、軒先の重さを内側で受け止める働きをします。
見分けの決め手
柱の真上に立ち、壁から前へ出る段を下から数えます。壁付きの肘木は数に入れず、壁の面より前へ出た肘木を一段目として、二段目、三段目と数えます。三段目の先で軒桁を受けていれば三手先、二段で止まれば二手先です。ただし出組を一手先と数える資料もあり、数え始めがずれます。奈良文化財研究所の全国遺跡報告総覧に集まる報告でも書き方に揺れがあるため、どの数え方に立つかを先に決めて数えます。
どの様式・時代に多いか
和様の大きな建物で早くから使われ、奈良県の薬師寺東塔のように八世紀の塔にすでに完成した形で現れます。平安から鎌倉を通じて塔と金堂の標準であり続け、京都府の醍醐寺五重塔、山形県の羽黒山五重塔のように各地の塔へも及びました。禅宗様では同じ組物を柱間にも並べる詰組になり、段の数より並べ方のほうが様式を分ける手がかりになります。
取り違えやすい相手
二手先と四手先が近い相手です。軒桁を受けている段が前から何段目かを見ます。二手先は二段で桁を受け、尾垂木が入らないこともあります。四手先は多宝塔の上層などに限られ、段がさらに前へ伸びます。段は下から見ると重なるので、斗の中心が壁からどれだけ離れているかを目で追い、尾垂木の付く高さと合わせます。広島県の明王院五重塔のように軒の深い塔では、段の重なりが特に読みにくくなります。
どこに立つと見えるか
軒先の真下ではなく、建物から離れて斜めに見上げます。真下からでは段が重なって一枚に見え、数えられません。奈良県の興福寺五重塔のように広い境内に立つ塔なら、塔の高さの半分ほど離れた位置から隅を見ると、段が横へずれて並ぶのが分かります。京都府の醍醐寺五重塔や山形県の羽黒山五重塔では木立が近いので、隅木の出る角を正面に置くと段が数えやすくなります。