内省する時間にする
ひとりの時間
人数: ひとり
内省する時間にするのは、誰にも話しかけられない時間を考え事の整理に使う過ごし方です。
時間の特徴
一人で頭の中を整理する時間です。運転という単調な動作を続けながらだと、かえって考えが整理されやすいと感じる人もいます。今日あったことを振り返るのにも、明日の段取りを組み立てるのにも使えます。心がさまようときの中身は将来に向いたものが多く、自分の予定を組む考えがよく混じります(2011年の研究)。運転中を測ったものではありません。
向いている場面
ひとりでの移動向き。考えをまとめたい予定があるときに向いています。一方、気分が沈んでいるときは注意が要ります。気分を沈ませた組は中立の組より心のさまよいが増え、さまよっている間は集中しているときより車間距離のばらつきとハンドルの切り返しが大きくなりました(20〜24歳の男性運転者40人の模擬運転・2022年)。沈んだ日は、考え事を家に持ち帰ります。
始め方
特別な手順は要りません。音楽やラジオを止めて静かな環境にする、考えたいことを一つだけ決めてから走り出す、といった準備をしておきます。交差点や交通量の多い道に入ったら、考えを中断して運転に戻します。ニュージーランドの運転者25人の実車調査(2019年)では、心のさまよいは速度が低く静かで単純な区間で多く、ラウンドアバウトでは最も少なく報告されました。
具体例
今日一日を振り返る、仕事の悩みを整理する、といった使い方。ただし、考え事に気を取られる危険もあります。フランスの研究チームが2012年、負傷事故に遭った運転者955人を調べたところ、強い心のさまよいの報告は、責任のなかった運転者より責任のあった運転者に多く見られました。観察した研究で、原因までは分かりません。
出典
- 論文・英語 Baird, Smallwood and Schooler(Consciousness and Cognition)(2011) Back to the future: autobiographical planning and the functionality of mind-wandering
- 論文・英語 Albert, Ouimet and Brown(Accident Analysis & Prevention)(2022) Negative mood mind wandering and unsafe driving in young male drivers
- 論文・英語 Burdett, Charlton and Starkey(Accident Analysis & Prevention)(2019) Mind wandering during everyday driving: An on-road study
- 論文・英語 Galéra et al.(BMJ)(2012) Mind wandering and driving: responsibility case-control study
解説動画: 【脳みそスッキリ】「頭のゴミ」を捨てれば、脳は一瞬で目覚める|ぜんぶ、ゴミのせいだった。/サラタメさん
頭の中に溜まる3つの重荷: 考え事がうまく整理できないと感じるとき、その原因は感情・他人の評価・過去の出来事という3つの要素が絡み合っていることが多いといわれています。目の前の苛立ちや不満だけに気を取られていると視野が狭くなり、本当に大事なことが見えにくくなります。誰にも話しかけられない静かな時間は、こうした要素をひとつずつ切り分けて眺め直すのに向いているかもしれません。
感情に流されている自分に気づく: 職場でのちょっとした出来事にイライラしてしまうのは、感情に関わる脳の働きが、冷静な判断に関わる働きより先に反応しやすいためだと説明されています。感情そのものをなくすことはできませんが、「今、感情に振り回されているな」と気づくだけでも、少し距離を置いて考え直せるようになります。一人で黙って運転している時間は、そうした気づきが生まれやすい場面のひとつです。
他人の基準で悩んでいないか見直す: 収入や持ち物などを他人と比べて落ち込んだり安心したりする基準は、実は自分で選んだものではなく、周囲や広告を通じて知らないうちに植え付けられたものであることがあるといわれています。今モヤモヤしていることを整理していくと、それが本当に自分にとって大事な基準なのか、それとも誰かの物差しをそのまま借りていただけなのか、見えてくることがあります。
過去の意味は、この先の歩み方で変わる: 過去の失敗や後悔そのものは変えられませんが、その出来事をどう受け止めるかは、その後の過ごし方によって変わっていくことがあります。苦労した時期を振り返って「あったからこそ今がある」と語れるようになるのは、後から意味づけが変わった例だといえます。今日あったことを振り返る時間は、良かった悪かったで終わらせず、この先にどうつなげるかまで考えてみる機会にもなります。
