霧が止まる・濃すぎる養液・光もれ、の防ぎ方。
初めての1箱で起きやすい失敗は、霧が止まること・養液を濃くしすぎること・箱に光が入ることの三つです。防ぐ順番は、根が傷むまでの速さで決まります。霧が止まれば根はその場で乾き、養液の濃さは数日かけて効き、光は数週間かけて藻を増やします。先に見るのは霧で、次が濃さ、最後が光もれです。
霧を止める原因は装置の側にあります。トマトを噴霧栽培で育てた研究(Tafesse ら 2021)は、根域を緩衝する培地が無いため、停電や機器の故障で短い期間に株が崩れうると書いています。同じ論文は、ミスターの詰まりで水が届かなくなることと、装置に絶えず手入れが要ることも挙げています。初めての1箱では、噴霧が始まる時刻に箱を開け、すべてのノズルから霧が出ているかを目で確かめます(気づいたら霧が出ていない・ノズルから霧が出なくなる)。圧力計があれば前日と同じ値かを見て(圧力が上がらない)、片側だけ霧が薄い区画はないかも同じ場で見ます(霧が片側にしか届かない)。噴霧を止めたあとに垂れ続けていれば、休みのはずの時間が濡れたままになります(止めても霧が垂れ続ける)。
養液は、濃い側へ外すほうが薄い側より戻しにくくなります。千葉大学の Phip ら 2007 は、園試処方の均衡培養液を基準の濃さとして、2倍・半分・4分の1の濃さでトウキを噴霧耕と点滴灌漑で育てました。噴霧耕の生育は基準・半分・2倍・4分の1の順で、2倍の区は半分の区より劣りました。1つの作物の1回の比較なので、どの作物でも同じとは言えませんが、最初の1回を薄い側に置く理由にはなります。Tafesse らの同じ研究では、養液の EC を1.5・4.5・9 dS/m にしたトマトで、処理から30〜35日後の1株1日あたりの吸水量が約1.1・0.6・0.4 kgと、濃い区ほど少なくなりました。フロリダ大学の普及資料は、小さな水耕のレタスで EC 1.4〜1.8 mS/cm・pH 6.0〜7.0 を目安に挙げています。足す前に養液のECと養液のpHを測り、計器の表示がppmなら養液の単位と換算で直してから読みます。減った分を水だけで足しても濃さは動くので(ECとpHが動く理由)、足したあとにもう一度測ります。
光もれは、箱の継ぎ目・配管の通し穴・透ける部材から始まります。コネチカット大学の普及機関の資料(Pundt)は、藻が増えるには水・光・養分の三つが要ると書いています。噴霧の箱の中には水と養分が絶えずあるので、取り除けるのは光だけです。薬用植物2種を高圧の噴霧栽培で育てた研究(Paponov ら 2023)は、根の近くで 1.5〜19.3 µmol m⁻² s⁻¹ の弱い光を14〜19日当て、根毛の密度が下がったと報告しました。地上部の重さは変わらず、1処理あたり4反復の試験でした。箱を組んだら室内の照明を点け、箱の中から外を見て、光の筋が見える向きを覆います(光が当たった根・根が緑色になって藻がつく)。タンクと配管の透ける面も同じで、覆いを落とすと液が濁ってぬめる側へ進みます(タンクの養液が濁ってぬめる)。
出典
- 論文・英語 Tafesse EG ほか(2021) Aeroponic systems: A unique tool for estimating plant water relations and NO3 uptake in response to salinity stress
- 論文 Phip NT・野島博・田代亨(2007) 噴霧耕栽培と点滴灌漑栽培による Angelica acutiloba Kitagawa の生育に及ぼす培養液濃度の影響
- 資料・英語 Sandoya GV ほか(UF/IFAS Extension・フロリダ大学) Growing Lettuce in Small Hydroponic Systems (HS1422)
- 資料・英語 Leanne Pundt(UConn Extension・コネチカット大学) Managing Algae in the Greenhouse
- 論文・英語 Paponov M・Ziegler J・Paponov IA(2023) Light exposure of roots in aeroponics enhances the accumulation of phytochemicals in aboveground parts of the medicinal plants Artemisia annua and Hypericum perforatum