りゅう座

一年中見える星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

りゅう座は、こぐま座を巻くように北の空を長く這う、たどるのに骨の折れる星座です。

形のたどりかた

出発点は頭の四辺形です。こと座のベガから北へこぶし一つ半ほど進むと、四つの星がゆがんだ四角を作っています。そこから西へ折れて胴を下り、こぐま座のひしゃくの下をくぐります。さらに北斗七星のひしゃくのそばまで回り込み、尾の先はおおぐま座の領域に接します。こぐま座をぐるりと巻く形で、胴は3等から4等が点々と続くだけなので、順に拾わないと途中で見失います。

目じるしになる星

2.2等のγ星エルタニンが最も明るく、頭の四辺形の南東の角にあたります。夏の宵にベガの北を探すと、この二つは15度ほどしか離れていません。四辺形の残りはβ星、ξ星、ν星で、4.9等のν星が暗いため、街では四角が三角に見えます。胴の途中のα星ツバンは、約4700年前に天の北極へ最も近かった星です。いまその役はこぐま座の北極星が引き受けています。

見ごろの時期と南中高度

頭の四辺形が南中するのは7月中旬の午後9時ごろで、夏の宵に天頂の近くまで上がります。γ星は赤緯プラス51.5度、東京では高度74度前後と、ほぼ真上を見上げる形になります。寝ころぶマットを敷いて仰向けになると、首を痛めずに胴まで追えます。胴と尾は北から北西へ回り込み、季節ごとに向きが変わるので、同じ形を同じ向きで探すと見つかりません。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

1083平方度と88星座で8番目に広いのに、2等星はγ星ひとつだけです。光害のある空に残るのは頭の四辺形までで、胴と尾は消えます。緯度でも分かれ、「90度から緯度を引いた値」を赤緯が上回れば沈まないという関係から、東京ではγ星が下を回るときに地平線をわずかに切ります。札幌では高度4度ほどを保って沈みません。

星座の中の見どころ

頭の四辺形の北西の角のν星は、双眼鏡で二つに分かれます。4.9等の同じ明るさの星が62秒角——満月の直径の三十分の一ほど離れて並び、肘を固定して手ぶれを止めると7倍でも割れます(りゅう座ニュー星)。胴の途中のキャッツアイ星雲は8等・視直径20秒角と小さく、双眼鏡では星と区別のつかない点のままです。りゅう座流星群の放射点も、この頭の近くに置かれています。

名前と物語

由来

ギリシャ神話では、ヘスペリデスの園で黄金の林檎を守る百の頭を持つ竜、ラドンと伝わります。この林檎の木はゼウスとヘラの結婚祝いに植えられたとされ、ラドンは木に巻きついて誰にも触れさせませんでした。功業でここを訪れたヘルクレス座の英雄に討たれたのち、その働きを惜しんだ神々によって天へ上げられたという話が伝わっています。

正体と距離

いちばん明るいのは頭のエルタニンで約154光年先で2.2等ですが、星座の名を背負うα星は胴のツバンで約303光年、3.7等とより遠く暗い星です。ツバンがα星に選ばれたのは明るさのためではなく、古代に天の北極のそばにあった星だったからで、名の重さと見た目の明るさが一致しない、珍しい例です。

変わるもの

ツバンは紀元前2830年ごろ、天の北極からわずか10分角というきわめて近い位置にありました。ピラミッド建設の時代には、この星を目印に北を定めていたと考えられています。歳差運動で極の位置はその後ずれ続け、今のこぐま座の北極星を経て、遠い未来には再びりゅう座の方向へ戻ってくる番が来るとされています。