フィッシュオイル(オメガ3)
ビタミン・ミネラル
フィッシュオイル(オメガ3)は、青魚のEPA・DHAを補う脂質
役割
青魚に多いEPAとDHAという長鎖のオメガ3系脂肪酸で、細胞膜の材料になり、体内の炎症反応の調整にかかわります。筋トレに上乗せして伸びるかは結論が割れており、健康な成人や患者を対象にした33本の系統的レビューを見渡した2025年の総括は、オメガ3脂肪酸の補給だけでは除脂肪体重の増加や維持、筋力や身体機能の向上を支える根拠が乏しいとまとめています。
摂り方
サプリはカプセルの総量ではなくEPA・DHAの含有量で比べます。食事摂取基準(2025年版)に載る日本人の食事記録(男女各92人)では、EPAとDHAは合計で1日に男性約1.05g・女性約0.81gです。筋トレ経験のある成人(完了21人)の10週間の試験では、魚油1日4.5g(EPAとDHAで3.85g)の群は、体重あたりのベンチプレスとスクワットの1RMがプラセボ群より伸びた一方、除脂肪体重に差はありませんでした。
注意点
酸化しやすく、魚臭が強くなったものは摂らないでください。開封後は冷暗所か冷蔵庫で保管します。米国の国立補完統合衛生センターは、副作用に口の中の嫌な味・口臭・汗のにおい・頭痛・胸やけ・吐き気・下痢を挙げています。高用量では出血傾向に影響しうるため、抗凝固薬を使っている方や手術を控えている方は医療者に相談してください。研究で使われた量を自己判断でまねしないでください。
出典
- 論文・英語 Heileson JL ほか(2023) The effect of fish oil supplementation on resistance training-induced adaptations
- 論文・英語 Nunes ほか(2025) Lack of evidence for Omega-3 fatty acid supplementation in enhancing lean mass, muscle strength, and physical function in healthy adults and clinical populations: An overview of reviews
- 公的機関・英語 米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)(2024) Omega-3 Supplements: What You Need To Know
- 公的機関 厚生労働省(2024) 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 脂質
解説動画: オメガ3のサプリを飲まない理由と、魚から摂るという選択/高須幹弥(高須クリニック)
概要: フィッシュオイルのサプリを飲んでいるかという質問に対し、効果があるのかどうかがはっきり分からないので今は飲んでいないと答えている。効果ありとする研究もあるが、効果なしとする研究も多い。効果ありのデータはサプリ会社の利権が絡み対象者が少ないものが多く表に出やすい一方、利権の絡まない研究では心疾患や脳卒中の予防になるという明確な根拠は出ていない、という見立てを示す。
食品から摂る場合は根拠がある: サプリと違い、リアルフードから摂る場合のデータははっきりしている。海産物を週1回以上食べる人は食べない人より心疾患のリスクが下がり、EPAやDHAをしっかり摂ると関節リウマチの症状が緩和するなど炎症を抑える作用がある。EPA・DHAは鮭・さんま・さば・まぐろ・いわしなどの魚のほか、うなぎ、牡蠣、貝類、いくらやたらこにも含まれ、αリノレン酸はえごま油やナッツ類に含まれる。
サプリが怪しいのは酸化のため: オメガ3脂肪酸は熱・光・空気に弱く酸化しやすいため、サプリは製造過程で酸化してしまっている可能性がある。どの製品がどれだけ酸化しているかは外からは分からず、酸化した油を摂ることは動脈硬化やがんの原因になりうる。その点、食品なら酸化させずに摂れるので、魚は生で食べる、密封されていて空気に触れていないサバ缶を使う、調理したらすぐ食べるといった摂り方を勧めている。加えて、魚や牡蠣には他の栄養素も一緒に含まれており、抽出した単独成分より効果が出やすいのではないかという説にも触れる。
オメガ6とのバランス: オメガ3は体内で炎症を抑え血液をサラサラにするのに対し、オメガ6は逆に炎症を促し血液を固める方向に働くため、どちらも大事だが比率が問題になる。理想は1対2から1対4だが、揚げ物・お菓子・カップ麺・サラダ油やマヨネーズが多い現代の食生活ではおよそ1対10に偏っている。だからオメガ3を積極的に摂ること自体は正しく、その手段としてサプリよりも食品を選んでいる、というのが結論。
解説動画(海外・英語): How Good For You is Fish Oil Really? | FRONTLINE/FRONTLINE PBS | Official
米国で3番目に多く使われているサプリを報道番組が検証する: 米国の公共放送PBSの調査報道番組フロントラインが、フィッシュオイルの根拠を取材した回。米国でフィッシュオイルは3番目に多く使われているサプリで、含まれるオメガ3、なかでもDHAは健康に欠かせないと広く信じられている。大手の業界団体を率いる人物は、血圧を下げる、冠動脈疾患による死亡のリスクを下げるといった効果を支える証拠は十分にあると番組に語る。しかし番組は「その裏側にある科学はもう少し複雑だ」として、ハーバード大学の研究者プレストン・メイソン博士のもとで、処方薬として承認されたフィッシュオイルと、店頭で売られているサプリの中身を比べていく。
原料は魚の副産物で、酸化しやすいのが弱点: フィッシュオイルはとても壊れやすい油だと番組は説明する。カタクチイワシのような脂の多い魚から副産物として搾られるので、魚を潰す工程で油が酸素に触れてしまう。ごくわずかな酸素でも油は酸敗する。番組では処方薬グレードのカプセルと市販サプリのにおいを実際にかぎ比べていて、処方薬のほうは「少し魚くさいが悪くはない」、市販品のほうは「これはひどい、傷んでいるにおいがする」という反応になる。メイソン博士によれば、においだけの問題では済まない。酸化した脂質は細胞の中で炎症反応を引き起こし、酸化した脂質を口から摂れば、心血管疾患につながりうる炎症の変化を招くという。なお、魚油に多少の魚のにおいがあること自体は避けられないとも述べている。
検査すると多くの製品が酸化の基準を満たしていない: メイソン博士は市販のフィッシュオイルを自分で調べた研究を発表しており、結果は他の研究と同じく酸化の程度が高いものだった。番組が挙げるニュージーランドの調査では、検査した製品の83パーセントが業界自身の定めた基準を満たさなかった。これに対し業界団体の代表は、自分たちもニュージーランド市場で47製品を買って複数の試験機関で調べたが同じ結果にはならず、基準を外れていたのは2割ほどだったと反論する。取材者が「消費者から見れば2割でも問題ではないか」と問うと、代表は本当に2割ならその2割は改善してほしいと認めた。これは米国とニュージーランドの市場を調べた数字で、日本で売られている製品の品質をそのまま表すものではない。
心臓病を防ぐ証拠があるかで取材者と業界が対立する: 品質を上げても、効くのかという疑問は残る。疫学者のアンドリュー・グレイ博士は、一流の科学雑誌に載ったフィッシュオイルの良質な研究をまとめ、一度目の心筋梗塞も二度目の心筋梗塞も、フィッシュオイルの摂取で防げるという説得力のある証拠は無いと結論づけた。そのために飲んでいる人、飲むよう勧められている人は時間とお金を無駄にしている、というのがグレイ博士の言い方だ。番組が業界側に最良の証拠となる論文を送るよう求めると、そこにはグレイ博士が挙げたのと同じ研究がいくつも含まれていて、取材者が結論を読み上げていく。突然の心臓死を減らすようには見えない、証拠が不十分、2012年のJAMA誌のオメガ3の摂取は総死亡リスクの低下と関連しなかった、別の雑誌の利益はかつて信じられていたほど大きくないのはほぼ確実といった文言が並ぶ。業界代表はそれは要旨を見ているだけだ、あの論文は心血管疾患という広すぎる領域を扱っていると反論した。
魚を食べるのとサプリを飲むのは同じではない: 多くの研究者が一致しているのは、実際に魚を食べてオメガ3を摂る場合には利益があるという点で、問題はサプリで同じことが証明されていないことだ、と番組はまとめる。メイソン博士も、細胞や体の正常な働きに欠かせない自然の成分なのだから臨床的な効果があってよさそうだと述べつつ、それはこれから証明されるべきことだと釘を刺す。その間にも、アルツハイマー病から心血管疾患まで幅広い効能をうたう宣伝が続いており、仮説を裏づける強い臨床試験がまだ必要だという結論で終わる。なお、この回はサプリの品質と心臓病の予防が主題で、トレーニングの効果や筋肉への影響を検証したものではない。持病があったり薬を飲んでいたりする場合の判断は医療者に相談してほしい。