何度も読み返して覚える
学習の思い込み
同じ文章を何度も読み返せば頭に入るという説
よく言われること
「同じ章を3回読めば頭に入る」という言い方は、参考書の使い方としてよく紹介されます。回数を重ねるほど覚えた量が積み上がると考えられていて、試験前に何周したかを数える勉強法もここから来ています。読み返しは道具も準備もいらず、開けばその場で始められます。だからいちばん楽な復習として選ばれ、2周目・3周目にも1周目と同じ効き目があるものとして扱われます。
実際はどうか
1回目の読み返しには上積みがありますが、続けて2回目、3回目を重ねてもテストの点はほとんど増えないと報告されています。同じ時間を閉じて思い出す側に回した群のほうが、後のテストで上に来るという結果です。読み返しが全部無駄という話ではなく、支持されていないのは回数に比例して積み上がるという部分です。上積みは1回目でおおむね止まります。
なぜ広まったか
読み返しは文字を追うだけで進むので手が止まらず、知っている文に見えてくる感覚が回数とともに強まります。この滑らかさを覚えた証拠と受け取るのがわかった気で、後で思い出せるかどうかとは別に動きます。ほかの方法より手間が小さいぶん選ばれる回数も多く、選んだ回数だけ実感が積み上がります。手応えを測りに使うと、この差は見えません。
どう言えば正しいか
「読み返しは1回までにして、2回目のかわりに閉じて思い出す」と言い換えると実験に合います。日をまたいでもう一度読む形は上積みが別に調べられていて、間をあけて再読するがそこを扱います。読んでいる最中に目が戻る読み返しは理解の修復なので、ここでいう再読とは別物です。代わりに置くものは思い出す練習の1つで足ります。
確かめられ方
Dunlosky ら 2013 の総説では、読み返しは他の技法との直接比較で一貫して下に置かれ、利用価値の低い技法に分類されています。Miyatsu ら 2018 は1回目には上積みがあるが2回目以降はほとんど増えないと整理し、Roediger と Karpicke 2006 は読み返しより思い出す側が上と報告しました。ただし材料の多くは大学生が読む文章で、仕事の学び全般に同じだけ当てはまるかは別問題です。
解説動画(海外・英語): Why Studying More Makes You Learn Less (The Familiarity Mirage)/Tiny Aha Lens
三度読んだのに: 動画は試験の場面から入ります。同じ章を三回読み、そのたびに分かってきた手応えが強まったのに、いざ問われると答えが出てこない。ページの見た目までは浮かぶのに中身が出てこない、という食い違いです。読み返した回数と、後から答えられる量は別々に動いていたと動画は言います。
自信と実力のずれ: ここで二つの電池にたとえます。準備できたという自信の側は読み返すたびに満ちていくのに、何も見ずに出せる量の側はほとんど動きません。この開きがわかった気で、読み返すほど広がっていくと述べます。自信そのものが嘘なのではなく、測っている先が違うだけだ、という整理です。
見覚えと再現: 案内表示を頼りに三度通った道は、覚えた気になります。表示を外すと道をたどれません。動画は毎日のように目にするマークを何も見ずに描かせた調査を引き、85人のうち1人しか正しく描けなかったと紹介します。見て分かることと、何も無い所から作り直せることは、別々の働きだという話です。
二度目までは効く: 読み返しに意味が無いわけではない、と動画は断ります。一度目でつかめなかった所は二度目で進みます。ただし三度目、四度目と重ねると上積みは急に細り、増えるのは自信の側だけ。取り出しやすさと蓄えの強さは別だという区別を挙げ、読み返しが磨いているのは見覚えの側だと言います。
閉じて書き出す: 読み返した群と、一度読んで思い出した群を一週間後に比べた Roediger と Karpicke の実験を挙げ、思い出した側が上回ったと紹介します。手順は、一度だけ読んで閉じ、白紙に書き出す、原文と照らして抜けた所だけ読み直す。同じ時間のまま、苦しい所を本番から机の上へ移す形です。