学習スタイルに合わせる

学習の思い込み

視覚型・聴覚型など好みに合わせて教えると伸びるという説

よく言われること

「人には視覚型・聴覚型・体感型といった得意な入り口があり、それに合わせて教えると伸びる」と言われます。いくつかの質問に答えて型を判定し、視覚型なら図を、聴覚型なら音声で学ぶよう勧められます。型が分かれば教材の選び方まで決まるという筋書きです。研修や入門書にも載り、教育者の7割以上が正しいと考えていると報告されています。

実際はどうか

好みそのものは本人が申告できますが、好みに合わせると成績が上がるという組み合わせの効果は、条件をそろえた検証で出ていません。成人を対象に聞く/読むという提示と言語型・視覚型の好みの一致を調べた研究でも支持されませんでした。同じ枠組みで後の再検証でも、結果は変わっていません。好みは実在していて、欠けているのは合わせた側が伸びた結果です。

なぜ広まったか

自分は図のほうが分かる、という実感は本当なので、そこから教え方も変えるべきという結論が自然に見えます。型に当てはめる説明は人を尊重している感じも出ますし、判定の道具は研修の商品として扱いやすいものでした。右脳型・左脳型や血液型で学び方が決まる説と同じ、人を型に分ける話の並びに位置します。好みを答えること自体は間違いではなく、効き目の話とは別だというだけです。

どう言えば正しいか

「型に合わせると伸びる」ではなく、「好みは人によって違うが、合わせて伸びた結果は出ていない」と言うほうが、報告されている中身に近いです。効いているのは入り口ではなく材料と課題の側です。内容に合う図や絵を添える話は絵と言葉を組み合わせるの側にあり、図や音を使うこと自体を否定する話ではありません。判定テストで人を型に当てはめる必要もありません。

確かめられ方

Pashler ら2008 の総説は、好みと教え方の一致で成績が上がることを適切な設計で示した研究が事実上見つからないと報告しました。Rogowsky ら2015 は成人を対象に聞く/読むの提示と言語型・視覚型の好みの一致を検証しましたが支持されず、2020年の再検証でも同じでした。確かめられているのは主に成人と短い教材で、教室で長く試した比較は乏しいままです。

解説動画(海外・英語): The Biggest Myth In Education/Veritasium

好みは実在する: 視覚・聴覚・読み書き・体感の4つに分ける枠組みが広く知られ、街で尋ねると多くの人が自分は視覚型だと答えます。ただし理由を聞くと「たぶんそうだと思っていただけ」という返事が返ります。動画はここから、得意不得意があること自体は否定しないまま、好みに合わせると伸びるかは別の問いだと切り分けます。

教える側の信じ方: 英国とオランダの教師およそ400人への調査では、9割を超える人が好みに合った提示のほうが学べると考えていました。この説を実際に使うには、まず一人ひとりの型を見分け、次にその型に合わせて教える必要があります。ところが枠組みを作った本人の説明をたどると、4つに分かれることを示した研究は無かったと分かります。

合わせても伸びない: 確かめ方は、型を見分けたうえで合う提示と合わない提示へ無作為に割り振り、同じテストで比べる形です。図で学ぶ人と文で学ぶ人を分けた実験では、一致した側の点数が上回りませんでした。大学に通っていない成人でも同じ結果で、学期を通して学び方を追った調査でも成績の差は出ていません。

覚え方が差を作る: 街頭の実験で8つ9つ思い出せた人がいましたが、理由は提示が好みに合っていたからではありませんでした。見た順に並べて頭の中で唱え直す、ばらばらの物を一つの話につなげるなど、自分で覚え方を工夫していた人たちです。動画は、残したいのは絵の細部や音の高さではなく意味だと述べます。

言葉と絵をそろえる: 総説はどれも、この説を支える確かな証拠はないと結んでおり、人気の高さと証拠の乏しさの落差が指摘されます。では何が効くのか。動画は絵と言葉を組み合わせるほうが片方だけより誰にとっても学びやすいという蓄積を挙げ、大事なのは提示の形より学ぶ人の頭の中で起きていることだと結びます。