思い出す練習

思い出す練習

読み返すのではなく、本を閉じてから思い出す

どんな技?

教材を閉じてから、思い出せることを口に出すか紙に書くだけの技です。ページを見ながらなぞる形は入りません。白紙でも自作の問いでも過去問でもよく、閉じてから出すという動作が本体です。出てこない箇所が見つかった時点で、この技はもう仕事をしています。買い足す教材も道具も要らず、移動中に声を出さずに言う形でも成り立ちます。

なぜ効くのか

思い出す動作そのものが、後で引き出しやすい形へ記憶を書き換えると説明されています。何度も読み返して覚える形はすらすら進むのでわかった気が上がりますが、引き出す側の練習にはなりません。少し詰まる取り出しのほうが後の再現を支えるという考え方は、望ましい困難と呼ばれています。読み直しとの差は、日をおいた測定でこそ表に出ます。

やり方

10分から15分読んだら教材を閉じ、2、3分で思い出せることを出します。出し切ってから開き、抜けた箇所だけを確かめます(答え合わせをする)。同じ材料を日をあけて何度か繰り返すところまでを1セットにします。出せなかった箇所は次の回の先頭に置き、出せた箇所は間隔を伸ばします。数えるのは出せた量ではなく、閉じて出した回数のほうです。

はまりどころ

直後のテストでは読み直しに負けることがあり、差が開くのは日をおいた測定のほうです。出せる割合が低すぎるときは、材料が難しすぎるか、一度に読む量が多すぎます。覚えた内容を出せることと、初めて見る問題に応用できることは別で、後者は形を変えて思い出すが持ちます。自分で問いを作るときに答えを見ながら書くと、閉じて出す部分が消えてしまいます。

確かめられ方

Roediger と Karpicke の2006年の実験では、5分後のテストでは読み直しのほうが良く、2日後や1週後では思い出す練習が大きく上回りました。Adesope ら2017年のメタ分析、Yang ら2021年の222研究・48,478人の分析も同じ向きの結果です。ただし材料は文章や単語対が中心で、実技の上達に同じだけ効くかは別に確かめる必要があります。

解説動画(海外・英語): Exam Series: Retrieval Practice/StudySmarter UWA

出すほうへ回す: 勉強はふつう、公式や事実を頭へ入れる側に向かいます。動画はその逆を勧めます。ノートを見ずに、覚えたことを記憶から釣り上げる形です。うまく引き出せたという動作そのものが、長く残る記憶を作る早い道のひとつだと述べます。試験で求められているのも、この引き出す動作のほうです。

見慣れただけ: ところが多くの学生は、勉強時間の大半をノートの読み返しや線引きに使っていると答えます。受け身で眺めるほど中身は見慣れていき、わかった気が育つと動画は指摘します。そこで働いているのは思い出す側ではなく、見覚えがあるかを見分けるほうの、記憶としては弱いとされる仕組みだという切り分けです。

詰まるのが良い: ノートを閉じると思ったほど出てこず、出てくるものも引っ張り出すのに苦労します。引き出す練習が避けられるのはここが苦しいからだ、と動画は言います。ただしそれは頭が働いている合図で、認知心理学のいう望ましい困難の例にあたります。クイズで粘った末にふっと答えが浮かぶ、あの手ざわりを狙うよう勧めます。

草の上の足あと: 動画は草地を歩く例えを置きます。初めて思い浮かべたときはかすかな足あとが残るだけで、二度と通らなければ消えます。同じ道を歩き直すたびに知識は組み直されて固まり、何度も引き出した先で踏み固められた道になります。だから同じ中身を一度ではなく何度も出すことが要ると述べます。

出し方と確かめ: やり方は札でも過去問や小テストでも、自作の問いでも、友人に出してもらう形でも、白紙に書き出す形でもよいとします。最初は少ししか出なくて当たり前なので、ノートへ戻って時間を置き、少し手こずるくらいの間をあけて出し直します。誤ったまま覚え込まないよう答えを確かめることを条件に、動画は結びます。