符号化と想起

記憶のしくみ

覚えることは、しまう作業と取り出す作業に分かれる

どういう意味?

覚える作業を、頭に入れる符号化と、あとで取り出す想起に分けて見ます。試験で答えが出てこないとき、入っていないのか入っているが出てこないのかで打つ手が変わります。人の名前が喉まで来て出ない状態は、後者の分かりやすい例です。しまい方と取り出し方は手当てが別なので、どちらの側で詰まったかを見分けるのが最初の一歩になります。

どこで出てくるか

本を閉じてから思い出す思い出す練習は、想起の側をわざと働かせる技です。覚えたときと思い出すときで手がかりが近いほど出てきやすい一方、本番の手がかりは覚えたときと同じ形では出ません。だから問い方を振る形を変えて思い出すが要ります。声に出して確かめる読んで唱えて見直すや、少し置いてから書き出す分かったつもりを検算するも、取り出す側を試す道具です。

取り違えやすいところ

英語の retrieval を「検索」と訳すと、いまの日本語では調べる操作に読まれてしまいます。ここでの想起は、自分の頭から引き出す働きを指します。しかも思い出す行為そのものが記憶を変えるので、しまった中身をそのまま読み出す再生ではありません(記憶は録画のように残る説)。「記憶力」の一語でまとめると、どちら側の失敗かが見えなくなります。

解説動画(海外・英語): How We Make Memories: Crash Course Psychology #13/CrashCourse

三つの段階に分ける: 覚えることを、頭に入れる符号化・しまっておく保存・取り出す想起の三段階に分けたモデルの紹介です。まず一瞬だけ残る感覚記憶として記録され、そこから短期記憶へ移り、繰り返し唱えていないと三十秒ほどで消えると説明します。残ったものが長期記憶へ移されます。

取り出し方も三つ: 取り出し方は再生・再認・再学習の三つだと整理します。再生は空欄補充のように手がかりなしで引き出すこと、再認は選択肢の中から見覚えのあるものを見分けること、再学習は半分忘れたものを覚え直すことで、二度目は一度目より楽になります。試験の形はこの三つの測り方に対応します。

意識するかしないか: しまう作業には、事実を覚えようと意識して行う面と、意識しないまま入っていく面があります。歯医者の椅子で緊張するような結びつきは後者で、止めようとしても勝手に働きます。自転車の乗り方や読む動作のように考えずにできるものも、手続き記憶と宣言的記憶の別として挙げられます。

浅い処理と深い処理: どれだけ残るかは処理の深さで変わると説明します。字の形や音だけをなぞるのが浅い処理、言葉の意味に結びつけるのが深い処理です。人名なら書体を覚えるのではなく、語の由来やその人物の話に結びつけ、さらに自分の経験や感情につなげると強く残るという順で示されます。

覚え方の道具: 覚えやすくする手として、頭文字などの語呂と、扱いやすい単位にまとめるチャンクが挙がります。七桁の数字をそのまま唱えるより、電話番号の区切りとして覚えるほうが楽だという例です。最後に、残る量はかけた時間と自分への関係づけで決まるとまとめます。