記憶の固定化

記憶のしくみ

覚えた直後の記憶は、時間と睡眠をかけて安定していく

どういう意味?

覚えた直後の記憶はまだ壊れやすく、時間をおくほど邪魔に強くなるという見方です。1900年前後の実験から続く筋で、覚えた直後に別の材料を入れると後の成績が落ちる、という形で確かめられてきました。いちばん揺らぎやすいのは覚えてすぐのうちで、同じ内容でもそのあと何を置いたかで残り方が変わります。ここまでは古くから向きの変わっていない部分です。

どこで出てくるか

覚えた直後の数分を空ける覚えた直後は何もしないや、材料を眠る前に置く寝る前に覚えるは、この安定していく時間を当てにした技です。眠りをはさむ眠って記憶を固めるも同じ筋にあり、直後に似た内容を詰め込むと落ちる向きは記憶の干渉と重なります。ただし裏づけの強さは技ごとに違い、効き目の幅と条件はそれぞれの項目の側に書いてあります。眠りを当てにして睡眠時間を削る使い方は、この語の趣旨から外れます。

取り違えやすいところ

睡眠との関係は総説にまとまっていますが、再現しない報告や効果の小ささも整理されていて、「寝れば固定される」とは言い切れません。深い眠りの量と定着ぶんが同じ人の中で結びつかなかった報告もあります。眠っているあいだに新しく覚える話(睡眠中に流して覚える)とは向きが違い、こちらは起きているうちに覚えた分の後始末です。

解説動画(海外・英語): How Your Brain Forms Memories - The Hippocampus Explained/Psych Explained

海馬を失った人: 昨日どこへ行き何を食べたかを思い出すとき、側頭葉の奥にある海馬が働いていると動画は始めます。役目が分かってきたのは、そこを失った人からでした。1950年代に発作の治療で内側側頭葉を取り除かれた男性は、子どものころは語れるのに新しい出来事を覚えられず、前日に何をしたかも言えなくなったと紹介します。

抜けるのは直前: 傷の前と後では抜け方が違う点も並べます。新しく作れなくなる型に対して、傷より前が思い出せない型もあり、そこで消えるのは子ども時代ではなく直前の数週間から数か月のぶんだと述べます。遠い昔の出来事は残るのに、近い過去ほど失われやすい。動画はこうした損傷の観察を並べて、海馬と記憶の関わりをたどっていきます。

五感がひとつに: 海馬が受け持つのは、自転車の乗り方のような体で覚えた側ではなく、手続き記憶と宣言的記憶でいう後者だと区切ります。デートを例に、服の色は視覚野、夜の寒さは体性感覚野、声は聴覚野、においは嗅覚野へ入り、そのすべてが海馬へ集まりひとつの記憶に束ねられると説明します。

場所ではなく強さ: 短期のものが長期になることを記憶の固定化と呼び、よくある取り違えは置き場所が移ると考えることだと言います。実際に変わるのはつなぎ目の強さのほうで、同じ組み合わせの細胞が何度も発火するほど伝達物質が増え、受け取り口も開いていく。やりとりが良くなるぶん取り出しやすくなる——長期増強と呼ばれる、学びで脳の側が変わる話だと述べます。

海馬の出番が減る: 長期の側へ移ったものは海馬の関わりが薄れていく、というのが有力な見方だと紹介します。何度も思い出した経験は結びつきが網の形になり、呼べばすぐ立ち上がるようになる。ただし記憶がどこに置かれているかはまだ議論の途中だとも念を押します。固定化とは置き場所が移ることではなく、つながりの側が変わっていくことだという整理です。