マランゴニ効果
界面と表面
表面張力の差が液を引っぱって起こす流れ
どんな現象?
グラスの内側に残った薄い液が音もなく登り、粒になって垂れ落ちてくる、いわゆるワインの涙。石けん水の膜に色の筋が走るのも、椀の汁に模様が浮かぶのも同じ仲間です。かき混ぜていないのに液が自分で表面を滑って動き出すのが、この現象のいちばんの特徴になります。
なぜ起きるか
同じ液面でも場所ごとに表面張力の差があると、強い側が弱い側の表面を引っぱります。引かれた表面は動き、粘りで下の層も連れていかれるので、目に見える流れになります。お酒では先に蒸発するのがアルコールで、薄くなった場所ほど表面張力が上がり、そこへ周りの液が集まります。集まって重くなった液は粒として落ちます。温度の差でも同じで、表面は温かい側から冷たい側へ引かれます。
どこで見られるか
ワインの涙、洗い桶に一滴落とした洗剤から輪のように広がる波紋、塗装やはんだが乾き際につくるむら。無重力の実験では、地上では重さに隠れているこの流れが液の入れ替わりの主役になり、装置の設計では無視できない要素になってきます。汁物の表面に浮いた油が、静かなのに模様を変えていくときも同じ動きです。
勘違いしやすいところ
アルコールは軽いから登る、という説明は順序が逆です。登らせているのは表面張力の差そのもので、蒸発はその差をつくる原因にすぎません。混じりけのない水では起きにくいので、見えないときは液の中身を疑ってください。乾いたあとに残る跡の形にはコーヒーリングも絡んできます。
解説動画(海外・英語): Marangoni Effect/Mohammad Wasim
こしょうと洗剤と小さな舟: 動画はワイングラスの内側にできる水滴やアメンボが水面を動ける理由への問いから始まる。使うのはこしょう、プラスチックの舟、洗剤、糸、水。舟に洗剤を置くと動きだすが、溶けた石けんが水面全体で同じ濃さになると止まる。動画はその理由を、水の分子どうしの結びつきが一度切れると自然には戻らないからだと説明する。
表面張力は縮もうとする力: 液体の表面張力は、表面にある分子どうしがより強く結びついていることから生まれる。動画はこれを縮もうとする力に比例するものとして扱い、表面張力が高い液体ほど縮む力も強いと言う。水を黄色、石けんを青にして並べ、石けんは界面活性剤のはたらきをする水より表面張力の低い液として置く。
低いほうから高いほうへ: 表面張力の違う二つの液が接すると、水の縮む力のほうが石けんより強い。つまり水の側が強く引く。その差し引きとして、低い側から高い側へ向かう正味の力が残る。これがマランゴニ流で、液は石けんのある側から水の側へ動いていく、と動画は言う。
舟が前へ出るわけ: 舟のまわりをもう少し細かく見る。舟の後ろでは表面張力が下がり、両側は水のまま変わらない。この不釣り合いが正味の力になり、舟は前へ進む。石けんが舟の後ろへ押し出されていくこと自体が、舟を前へ引いていく力の正体だと動画は説明する。
工場で使われている: 動画は日常で見かける例をいくつか映したあと、工学での応用に移る。挙がるのは充填式の蒸留塔と流下液膜式の吸収器で、マランゴニ対流を起こすと吸収の効率が上がるという。さらに人工降雨(クラウドシーディング)の技術にも使われている、と締めくくる。