コーヒーリング
界面と表面
見られる場所: 家の中 / 大きさ: 手のひら
コーヒーリングは、乾いた液滴がふちだけ濃く残る跡。
どんな現象?
こぼれたコーヒーが乾くと、中は薄く、ふちだけが濃い輪が残ります。赤ワインをこぼしても、同じ輪ができます。液体に浮いていた粒子が、乾く途中で流れに乗って縁へ集まった結果です。ふちが机に固定されていることも、輪の条件です。壁を塗るとき、この輪はそのまま仕上がりのムラになります。輪になるかどうかは、粒子が球に近いかと、液体の混ざり方に左右されます。
なぜ起きるか
ふちは机にくっついて動けません。ふちは蒸発が速く、減った分を埋めるように、中央から外へ向かう流れが生まれます。この流れが浮いている粒を縁へ運び、乾ききるまで押し出すため、粒はふちに置き去りにされて輪になります。1997年のDeeganら(Nature)は、輪の原因を毛細管流と示しました。動画(UvA)は、シカゴ大学の研究者がこの流れの理論を実験で確かめ、結果は理論とほぼ合ったと説明しています。
どこで見られるか
身近な例は、机に残るコーヒーの跡と、こぼれた赤ワインの跡です。英語の解説動画(UvA)は、染色・印刷・洗浄の工程でも同じ輪が問題になると述べています。2011年のYunkerら(Nature)は、球ではなく楕円体の粒子を使うと輪が抑えられることを示しました。同じ動画は、塗料やインクを作るときにこの輪の仕組みを知る価値があると述べています。
勘違いしやすいところ
粒が重さで沈み、外へ転がった、と考えると外れます。動かしているのは蒸発を補う外向きの流れで、上下の沈み方ではありません。ふちが動ける面では、外へ流れる代わりに液が縮むので、輪になりにくくなります。Huら(2006)は、水を含む有機液体の混合液で、表面張力の差が生む循環流が粒を中心へ戻し、堆積が中心に偏ることを示しました。
出典
- 論文・英語 Deegan, Bakajin, Dupont, Huber, Nagel, Witten(1997) Capillary flow as the cause of ring stains from dried liquid drops
- 論文・英語 Yunker, Still, Lohr, Yodh(2011) Suppression of the coffee-ring effect by shape-dependent capillary interactions
- 論文・英語 Hu, Larson(2006) Marangoni Effect Reverses Coffee-Ring Depositions
- 動画・英語 Fluids & Soft Matter UvA The Coffee stain effect
- 動画・英語 And Now You Know The Coffee Ring Effect (and a little magic trick)
解説動画(海外・英語): Why Does Coffee Make Rings?/Technicality
縁だけが濃く残る: こぼしたコーヒーの染みを早回しで見ると、全体が一様に薄くなって消えるのではなく、縁だけが濃い輪として残る。コーヒーは豆の油や成分が湯に溶けた溶液(濁りや油の粒も混じる)で、乾くときには溶かしていた水だけが飛び、溶けていた粒は残る。その残り方がなぜ輪になるのかを追う。
縁が机に留められている: 映像をよく見ると、水が減っていくのに水たまりの外周は縮まない。動画はこれを机に留められていると表現する。机の表面の細かい傷やざらつきに液の縁が引っかかり、動けないまま乾いていく。この留め付けが無ければ、そもそも輪はできない。
縁ほど速く乾いていく: しずくは中央より縁のほうが傾きが急で、蒸発は空気と触れる面積に応じて進む。だから縁のほうが蒸発が速い。それでも縁だけがへこんだ形にはならない。その形は外周にいる分子を増やしてしまい表面張力に逆らうので、中央の水が縁へ走ってコーヒーの粒を運び、縁では水だけが飛んで粒が残っていく。
1997年に名前がついた: この現象をまとめたのはロバート・ディーガンらで、1997年に「それまで調べられていなかった形の毛細管現象」として報告した。起きる条件は3つ、液の縁が面に対して角度を持つこと、縁が留められていること、液が蒸発すること。重力や表面張力の勾配は効かない、とも整理している。
粒の形を変えて防ぐ: 2011年にはピーター・ユンカーらが防ぎ方を示した。鍵は粒の形。コーヒーの粒は丸いので縁でぎっしり詰まるが、楕円形の粒は液の表面でゆるい網目を作り、中心へ向かって育ちながら硬くなって外向きの流れに逆らう。結果としてしずくの下を一様に覆う。インクや塗料の輪じみ対策になる。