コーヒーリング
界面と表面
乾いた液滴がふちだけ濃く残る跡
どんな現象?
こぼれたコーヒーの粒が乾くと、中は薄く、ふちだけが濃い輪になって残ります。泥水でも絵の具でも同じで、乾いた跡は円の縁に沿った線を描きます。中央にあったはずの粉が、乾いていく途中で外へ運ばれた結果です。輪の太さは一ミリ以下のことも珍しくありません。
なぜ起きるか
液滴のふちは机にくっついて動けません。ふちは蒸発が速いうえに液が薄く、真っ先に減っていきます。それでも円の大きさは縮められないので、減った分を埋めようと中央から外へ向かう流れが生まれます。この流れが浮いている粒を運び、乾ききるまで押し出し続けるため、粒はふちに置き去りにされて輪になります。ここにマランゴニ効果の逆向きの表面の流れが加わると輪は崩れ、どちらが勝つかはまだ完全には整理されていません。
どこで見られるか
机に残るコップの跡、雨上がりの車体に浮かぶ白い輪の跡、印刷した点のふちだけが濃くなる現象。医療では血液の乾いた跡の並び方から状態を読む試みもあり、十マイクロメートル前後の粒がどこへ運ばれたかが手がかりになります。食器を自然乾燥させたあとの水の跡も同じ形の輪です。
勘違いしやすいところ
粒が重くて外へ転がった、と考えると外れます。動かしているのは蒸発を補う横向きの流れで、上下の沈み方ではありません。ふちが動かないことが条件なので、よく滑る面では輪はできません。輪を消したいときは乾く速さを落とすか、表面に逆向きの流れをつくるのが定石になります。
解説動画(海外・英語): Why Does Coffee Make Rings?/Technicality
縁だけが濃く残る: こぼしたコーヒーの染みを早回しで見ると、全体が一様に薄くなって消えるのではなく、縁だけが濃い輪として残る。コーヒーは豆の油や成分が湯に溶けた溶液(濁りや油の粒も混じる)で、乾くときには溶かしていた水だけが飛び、溶けていた粒は残る。その残り方がなぜ輪になるのかを追う。
縁が机に留められている: 映像をよく見ると、水が減っていくのに水たまりの外周は縮まない。動画はこれを机に留められていると表現する。机の表面の細かい傷やざらつきに液の縁が引っかかり、動けないまま乾いていく。この留め付けが無ければ、そもそも輪はできない。
縁ほど速く乾いていく: しずくは中央より縁のほうが傾きが急で、蒸発は空気と触れる面積に応じて進む。だから縁のほうが蒸発が速い。それでも縁だけがへこんだ形にはならない。その形は外周にいる分子を増やしてしまい表面張力に逆らうので、中央の水が縁へ走ってコーヒーの粒を運び、縁では水だけが飛んで粒が残っていく。
1997年に名前がついた: この現象をまとめたのはロバート・ディーガンらで、1997年に「それまで調べられていなかった形の毛細管現象」として報告した。起きる条件は3つ、液の縁が面に対して角度を持つこと、縁が留められていること、液が蒸発すること。重力や表面張力の勾配は効かない、とも整理している。
粒の形を変えて防ぐ: 2011年にはピーター・ユンカーらが防ぎ方を示した。鍵は粒の形。コーヒーの粒は丸いので縁でぎっしり詰まるが、楕円形の粒は液の表面でゆるい網目を作り、中心へ向かって育ちながら硬くなって外向きの流れに逆らう。結果としてしずくの下を一様に覆う。インクや塗料の輪じみ対策になる。