液滴の分裂

界面と表面

一本の流れが粒に切れていく過程

どんな現象?

蛇口をごく細く開けると、水は途中まで糸のようにつながり、ある高さから急に粒へ切れます。霧吹きやシャワーでも、出口の少し先で分かれます。よく見ると糸のどこかが細くくびれ、そこがちぎれて丸い粒になり、あいだに小さな粒が取り残されることもあります。

なぜ起きるか

細長い柱は、同じ体積の中では表面の広い損な形です。ゆらぎで少しでもくびれると、細い場所は太い場所より表面が強く内へ押すので、中の液は太いほうへ押し出されます。押し出されるほどくびれは細くなり、戻す働きがないので細りは止まらずちぎれます。切れた液は表面の最も小さい形へ落ち着き、丸い粒になります。粒の大きさと数は流れの速さや粘りにも左右されます。勢いと表面張力のどちらが勝つかの目安がウェーバー数で、粘りの効き方はまた別の数で見ます。

どこで見られるか

シャワー、霧吹き、雨だれ、印刷機のインクの噴射、燃料の噴霧。台所の蛇口を糸のように細く開けて指先をそっと触れさせると、切れ目のできる高さが変わるのが見えます。滝の落ち口で水がしぶきに変わる境目も同じ切れ方で、軒先から落ちるしずくが粒のまま落ちてくるのも同じ理由です。

勘違いしやすいところ

空気にぶつかって割れる、と思われがちですが、空気がなくても細い柱は切れます。空気が効くのは速く飛ばしたときで、そのときは薄い膜になってから穴が開く別の壊れ方です。もうひとつ、粒の大きさはそろいません。同じ条件でもばらつき、細かい予測は今も難しい問題として残っています。

解説動画(海外・英語): The Plateau-Rayleigh Instability/Fluids & Soft Matter UvA

シャワーが途中で粒になる: シャワーの水がなぜ一本の柱のままでいられず、途中から粒に分かれるのか、という問いから入る。水を絞ったときにはっきり見えるし、蛇口がぽたぽた鳴るのも同じ理由。どんな液にもごく小さな乱れがあり、不安定な系ではそれが雪だるま式に育って柱をくびれさせ、ちぎってしまう。

表面積が小さいほうへ: 効いているのは主に表面張力で、動画はこれをエネルギーの競争として描く。液はエネルギーの低い形に落ち着こうとし、その高さは表面積で決まる。同じ量なら粒に分かれたほうが柱より表面積が小さいので、そちらが選ばれる。競争相手は、密度と柱の半径と噴き出す速さで決まる慣性のエネルギー。

くびれた所ほど圧力が高い: 分裂の中身は圧力の差。面の曲がりがきついほど内と外の差が大きくなるので、くびれた所ほど圧力が高い。液は圧力の高いほうから低いほうへ動く、つまりくびれから膨らみへと抜けていく。抜けた分だけくびれはさらに細くなる。表面張力が強いほど差が急になり、粒になるのも早い。

どの波長が勝つか: 柱がどこまで伸びてから切れるかが臨界長さで、噴き出す速さで割れば臨界時間になる。乱れの育つ速さは乱れの波長で決まり、成長率を波数に対して描くと山ができる。頂上は波数と柱の半径をかけた値が0.697のところ。ここが他の乱れを押しのけるので、そろった粒の列になる。

スピーカーで揺さぶる: 実験ではスピーカーで水の噴流を揺さぶり、高速度カメラで撮る。スピーカーを入れた瞬間に臨界長さが短くなり、粒に切れはじめる位置が噴き出し口の側へ上がる。周波数を上げていくと粒どうしの間隔が縮む。山の頂上にいちばん近い周波数のとき、粒の列がもっともそろった。