毛細管現象
界面と表面
細い隙間を液体が自分で登っていく現象
どんな現象?
細いガラス管を水に立てると、誰も触っていないのに管の中だけ水が上がり、ある高さで止まります。管が細いほど高く上がり、太い管ではほとんど上がりません。紙タオルの端を水に浸すと数秒ほどで濡れが広がっていくのも同じで、土やスポンジ、布の中でも同じことが起きています。
なぜ起きるか
管の内壁が水と仲のよい材料だと、水は壁を伝って登ろうとし、管の中の水面は上に凹んだ形になります。凹んだ面のすぐ下は、外の空気より圧力が低い状態です。すると外の空気に押されている管の外の水面のほうが押し勝ち、管の中の水が持ち上がります。上がった水の重さと釣り合ったところで止まる、という順番です。細い管ほど凹みが急で圧力の差が大きく、しかも持ち上げる水が軽いので高くなります。壁が水をはじく材料なら水面は逆に盛り上がり、液は管の中で下がります。境目の条件はぬれと接触角で決まります。
どこで見られるか
紙タオル、ろうそくの芯、万年筆のペン先、乾いた土がじわりと湿っていく畑。乾いたスポンジの角を水に触れさせると、十数秒かけて濡れの境目が上がり、途中で止まる高さがあると分かります。木の幹を水が上がるしくみにも、この働きが一部だけかかわっています。
勘違いしやすいところ
管の上から何かが吸い上げている、という向きの誤解がとても多いところです。吸う主役はどこにもなく、効いているのは水面のふちの形と外の空気なので、管を長くしても高さは同じです。しかも上を切っても水は噴き出しません。止まる高さより短い管では、水は縁で丸くふくらんで止まります。汲み上げの道具の代わりにはならない、と覚えておくと安全です。
解説動画: 毛細管現象の解剖/ScienceSketch
細い管ほど高く上がる: 木が水を運ぶ話の続きとして、管が細いほど中の液面は高く上がる、太い試験管ではほとんど上がらない、という所から始まります。効いている力は2つ。上向きの力は、水の分子とガラス中のシリカが引き合う付着力で、水は壁づたいに引き上げられ、管の中の水面は上に凹んだメニスカスになります。
円周と断面積の綱引き: 下向きの力は水柱の重さで、体積に密度と重力をかけたもの。体積は断面積かける高さなので、重さは半径の2乗で増えます。上へ引く力のほうはメニスカスの円周に比例するので、半径の1乗でしか増えません。だから管が太くなるほど重さが先に勝ち、上がらなくなります。
高さを決めるジレンの法則: 2つの力が釣り合う高さを解くと、高さは半径に反比例する形になります。動画は教科書には無い自分の導出だと断ったうえで、確立されたジレンの法則と似た形だと示します。この法則は数百の実験で確かめられ、流体力学と、ごく小さなスケールの流れを扱うマイクロ流体工学の土台になっています。
表面張力と接触角: 引き上げる側の定数は、測れる量2つに書き直せます。ひとつは液体の分子どうしが引き合う凝集力から生まれる表面張力で、液体と温度が決まれば一定です。もうひとつはメニスカスが壁となす接触角のコサイン。付着が強いほど角は小さくコサインは1に近づき、弱いと角は90度へ寄ってコサインは0に落ちます。
水銀では逆に下がる: 同じ話は水以外にも通り、水銀では向きが裏返ります。水銀はガラスに付着しません。原子どうしが強く引き合う高い凝集力のぶん表面張力が大きく、接触角は90度を超えます。するとコサインが負になって高さも負、つまり管の中の液面は容器の液面より下。メニスカスも水と逆に凸の形です。