大戸口
外まわりの造作
土間へ開く、家でいちばん大きな出入口です。厚い板戸の大戸を引き、その一枚に切った潜り戸を、ふだんの出入りに使います。
どんな形か
土間の妻側や平側に開く、間口の広い出入口です。鴨居は頭よりずっと高く、笠をかぶり荷を提げたまま通れる高さと幅を取ります。ここに立てるのが厚い板戸の大戸で、多くは柱間を左右へ引く引戸として敷居に落とし込まれます。大戸の一枚には人ひとりぶんの潜り戸が切ってあり、夜も冬もそこだけを開けます。戸を引き込む先には板戸が納まるだけの壁の幅が要るため、正面の柱の割り付けもこの一枚で決まります。
なぜその形になったか
式台を構えた玄関を、どの家も持てたわけではないためです。近世の格式のもとで玄関と式台は限られた家に許された構えで、多くの民家では土間の出入口がそのまま正面の役目を負いました。牛馬も農具も人も同じ口から入るので、収穫物や大八車を屋内へ引き込めるだけの間口が要ります。格式の表現ではなく、仕事の動線が先に決めた口だといえます。
見分けの決め手
戸が横へ引かれ、その中に潜り戸が切ってあるかを見ます。敷居に引戸の溝が通っていれば大戸口の側で、溝がなく上に軸や吊金物の跡が残るなら別の建具です。潜り戸の下框はまたぎ越す高さまで上がり、角が長年の出入りで丸くなります。土間の口だけ鴨居が高く、床上の建具と寸法がそろわない家も多いので、敷居の高さを追うと土間と床上の境が読めます。
取り違えやすい相手
式台を構えた玄関と、揚戸・蔀が相手です。玄関は床を張った式台から上がる口で、履物を脱ぐ段があり、土間へは続きません。揚戸と蔀は板戸を上へ跳ね上げるか、外して取り去る仕掛けで、横へ引く溝を持ちません。潜り戸の有無だけでは決まらず、後から建具を替えた家もあるため、敷居と鴨居の溝を合わせて読みます。町家では通りに面してこの口が開き、農家では庭や作業場に向いて開くという違いもあります。
どのあたりで見られるか
土間を持つ民家であれば、地方を問わず開いています。文化遺産オンラインで大戸口を引くと26件が当たり、長野県の波多腰家住宅主屋、香川県の漆原家住宅主屋、京都府の吉岡家住宅主屋と、東西に散らばります。移築して公開している民家園では、大戸の内側に立って潜り戸を見上げられます。通り土間の端から表と裏の口が一直線に並ぶかを確かめると、位置関係がつかめます。